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故意 2
「お前の事、読めねぇわ」
「よく言われます。叔父にも心配されて、今の会社に就職したんですから」
確かにあれでは心配になるだろう。人間関係の悪くない所なのに、石井を苦手だと思っている同僚が居るのだから。
「だったらさ、叔父さんの事を心配させるなよ」
「……だから、だろうが」
ぼそりと何かを呟いたが、はっきりと聞こえなかったので「何?」と聞きなおせば、
「所で、これってLe・シュクルのですか」
と箱を指差して聞いてきた。
「そうだけど」
加藤が差し入れで持ってきてくれる焼き菓子。いつも食べている所を見たことがなかったので甘い物は苦手なのだろうと、故に店の名前を知っていた事に驚いた。
「好き、なんですか?」
本当は気になっていたのだが、知らんぷりをしていたのだろうか。
「あぁ、好きだよ」
甘い物は食べるが、特に好んで食べる方ではない。だが、それが切っ掛けで会社でも皆と話せればと思い、そうこたえただけなのだが、
「チッ」
舌打ちをされた。しかも先ほどより更に不機嫌になっている。
まただ。気を遣いそうこたえたというのに、神経を逆なでしてくれる。
「なんだよっ、お前は!」
別に喧嘩をしたい訳ではない。だが、もう我慢も限界だ。
石井はいつものように表情が乏しく、それが余計に大浜をイラつかせた。
「訳、わかんねぇ」
「加藤さんの事、好きなのかよ」
呟くように吐きだされた言葉は、しっかりと耳に届いてしまった。
「……はぁ?」
加藤の事は好きだし、尊敬している。
ただそれだけなのに、舌打ちされる理由が解らない。
「お前ね、何なの、その態度は」
「犬のリードはわざと外しました」
「なん、だと」
「貴方がが使っている香水を覚えさせて、向かっていくように仕向けたんです」
犬が都合よく自分に向かっていくかは賭けだったという。
「お前ッ」
あきれてものが言えない。
「下らねぇことを覚えさせるな。こいつが可哀そうだろう」
「でも、こうでもしないと、切っ掛けがつかめないから」
そんな事、子供だって知っている。
昼休みに何度も食事に誘った。飲み会だって、話をするチャンスの場だ。それをふいにしたのは自分だろう。
「そういうのは自分自身でどうにかしろ!」
「大浜さん」
驚き、そして泣きそうな顔へと変わる。
その手を差し伸べてやるつもりは今はない。話は終わりと、彼の横をすり抜けて実家へと向かった。
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