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岡惚 2
あの飲み会の一件もあり、大浜の事を少しずつ意識するようになった。
一緒に歴史の話をしたら楽しいだろうなと、だが、仲良くなる切っ掛けの作り方が解らない。
楽しそうに笑う大浜を見る度、胸の奥が疼くようになり、相手に対しムカつくようになった。
大浜がジョギングしている事は知っていた。誰かと話をしているのをたまたま聞いたからだ。
そこで切っ掛けが作れたらと、思いついたのが犬を飼う事だった。
散歩をしていて偶然会う、それなら不自然ではなく話をすることもできるだろう。
だが、上手くいかなかった。
話しかけるのにどうしらいいのだろうと、次に思いついたのは彼が普段使っている香水を覚えさせることだった。
駄目もとであったが、意外なことに上手くいった。
手に入れたチャンス。だが、そこで可愛げのない事を言ってしまい相手を怒らせる結果となってしまった。
しかもそれが切っ掛けで会社で言い争いになり、叔父が止めてくれたおかげでどうにかなったが、流石に自分の馬鹿さ加減に呆れた。
また偶然を装い同じ手を使って大浜との切っ掛けを作ったのだが、武将を道具として使ってしまった事を怒られ、自分でどうにかしろといわれた。
それが重く心にのしかかる。どうすればいいか解らないから武将に頼ったのだ。
大浜と別れてからずっと土手で川を眺めながら考えていた。
人と関わるという事はこんなに大変な事なのかと、もう諦めようと腰を上げるが、一歩を踏み出せずに座り込む。
それを何度も繰り返しているうちに疲れて肩の力が抜けていく。
「どう気持ちを伝えればいい?」
犬は見ているだけで気持ちが伝わってくる。
嬉しいときは尻尾を沢山振るし、悲しいときは耳と尻尾が垂れ下がっている。
感情を表に出すのが苦手な石井は、素直に感情を表現できて羨ましい。
「……あぁ、そうか。素直になればいいのか」
そこにやっとたどり着いたころ、当たりはすっかりと夕日に包まれていた。
流石に帰ろうと起ちあがると、犬が土手を勢いよく上っていく。
「どうした」
引っ張られながら土手を上がるとそこに大浜の姿があった。
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