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不器用な愛と恋6

―ライside―  僕は、恵の別荘に勝手にあがらせてもらうと、ずかずかと寝室を目指した。寝室のドアをノックもせずに開けると、恵がソファに背もたれに寄りかかって、仮眠をとっていた。 「ヘリの音がしたから、そろそろ入ってくると思ったよ、莱耶」  瞼を落としたまま、恵が声を出した。 「智紀の容体はどうなんですか?」 「大丈夫だ。回復に向かっている…が、絶対安静だ」  恵が瞼を持ち上げると、疲れた表情のまま、僕に微笑んだ。 「元夫婦間のトラブルに、智紀を巻き込まないでください。こんな大怪我をして…」  僕はベッドに横になって眠っている智紀の頬を撫でた。  血の気の失せた青白い顔がなんとも痛々しくて、僕は思わず銃口を、恵に向けた。 「恵、僕は智紀を愛してる。誰よりも…」 「わかってる。私も反省している」  恵が寂しそうに笑うと、ソファを立ちあがった。 「私は身を引こう。智紀を頼んだ。ライ」 「恵? 何を言って…」 「ここは、梓も知らない私の土地だ。ここをライの家だと言って、智紀を養生させてやれ。ライと智紀がここにいるなら、私は決してこの土地には足を踏み入れない。私が来なければ、私と智紀が会うこともないだろう」  恵が歩き出す。寝室を出て行こうとした。 「ちょ…待ってください。それで本当に、事がおさまるとでも思っているんですか?」 「さあな。だが、私にはそれしか思いつかない」 「だからって、智紀の気持ちはどうするんですか?」 「ライが、忘れさせればいいだろ。私などを思い出させないくらい愛してやればいい」  恵が、「じゃあな」とだけで言うと、寝室を出て行った。  まったく。自分勝手なお人だ。  僕は拳銃を胸元に隠すと、智紀の顔を見つめた。  智紀の性格を知らなすぎる。この子は、まっすぐで良い子なんだ。だから恵だって、惹かれたはず。  恵のまわりにいる人間とは比べ物にならないほど、素直で純粋で、気持ちにまっすぐな智紀だからこそ、恵だって…傍に置きたいって。独占したいって思ったはず。  今さら逃げるなんて、智紀が許すとでも思っているんですかね? あまり、智紀を甘く見ていると、痛い目を見ますよ。  僕は、智紀の兄なんですから。智紀の行動くらい予測できるんですよ。

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