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Ⅹ リアル≒W

「なんで……」 零れ落ちそうな涙を、必死に押さえる。 泣いてしまったら珠が見えなくなる。 見えなくなって、珠がいなくなったら…… そんなの嫌だ! 「消えませんよ」 あたたかな腕の中で、温もりに満ちた吐息がくすぐった。 「生命力を吹き込んだ瞬間、君が『死なないで』と願ってくれたから…… どうやら、私達は一つの命を二人で共有しているみたいです」 「俺と、珠が一つの命?」 「そう。君と私は一つです」 私が君を 俺がお前を 「大好きだから、一つの命になったんです」 俺と珠は一つだ。 「君を離しませんよ」 グイッと腕を引かれて、黒猫の消えた路地裏に引きずり込まれた。 「お互い大好きなんだから、問題はクリアでしょう?」 怪しげに光る彼岸花が、漆黒の瞳の中に咲く。 「私の生殖器で体を繋げて、おちんちんを生やしてあげます」 そそそ、それってー★ 「セックス!」 「交尾!」 同時に声に出した口は、瞬く間にキスで塞がれた。 「……ぁ、フウ」 つぅ、と糸を引いた唾液が雲間の月明かりに落ちて輝く。 「大好きですよ、涼君」 何度目かの殺し文句で、俺の体はふにゃふにゃだ。 飼い主は、水も滴るいい猫に逆らえない。 もしかして……… 珠、すごく猫かぶってない? 猫かぶりの下は、狼って事ない? 「猫又ですよ」 二本の尻尾の影がふわりと揺れる。 「涼君は、俺のもの……♥」 ―完―

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