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第4話

秋山は自室のベッドにうつ伏せになり、泣きながら後悔した。自分の気持ちなんてどうでもいい。ただ、夏川と、友人として、好きなことを語り合っていられたら、それだけで良かったのに。失ってから気付くなんて馬鹿すぎる。 あまりにも身勝手で我が儘な自分に、秋山は心底嫌悪した。 ひと月以上経った現在も、気持ちを引きずっていた秋山の前に、何の前触れもなくこつぜんと、夏川は姿を現したのだ。 「おーまた上がった!綺麗だなあ。この轟音も癖になるよな」 二個目の弁当もペロリと食べ終え、缶ビールを片手に窓辺で花火を観賞している夏川を見つめ、秋山はそっと溜息を吐いた。挨拶は別として、もう長いこと口も聞いていなかったというのに、親しかった時と何ら変わらない態度で接してくる夏川の真意が解らない。当然秋山に腹を立てている筈だ。だが、そんな素振りは夏川から微塵も感じなかった。気まずさと緊張で体を固くさせながらも、何とか弁当を食べ終え、手持ち無沙汰になった秋山は、夏川が買ってきた缶ビールに手を伸ばしかけ、そんな場合じゃないだろ、と己をたしなめる。 ずっとこのままでいいわけがない。 夏川にきちんと謝るべきだ。 本当はもっと早くそうするべきだったのに、また自分はずるずると、逃げてばかりいる。 今さら遅すぎるかもしれないけど、夏川はわざわざ秋山に会いに来てくれて、話す機会をくれたのだ。今を逃したら、もう二度と夏川と友人には戻れない。そんな気がした。 秋山は、熱心に花火を眺めている夏川にそっと近づき、重々しく口を開いた。 「……夏川、その……」 「ん?」 こちらを振り向いた夏川と視線が合い、秋山は一瞬怯んだが、気合いを入れ直して声を振り絞る。 「……言うのがかなり遅くなったけど……当然避けるような態度を取って本当にごめん……俺の勝手な振る舞いで、いっぱい迷惑かけてごめん……」 謝りながら秋山は、自分が情けなくて堪らなくなった。たとえ夏川が自分を許さなくても、せめて今、この気持ちが伝わりますようにと、秋山は心を込めて深く深く頭を下げた。 ドーン、ドーン、と、ひっきりなしに鳴り響く花火の音が、やけに大きく秋山の耳に届いた。

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