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兄弟愛

ー智紀sode- あ、眩しいなあ。もう朝かよ、早いなあ。毎晩毎晩、道元坂に抱かれていると朝が来るのが早く感じる。 早めに床についても、結局は何時間も道元坂に抱かれて、眠りにつく時間は遅くなる。道元坂は、俺が寝た後も起きて仕事しているみたいだ。 詳しくは話してくれないから、よくわかんねえけど。別の部屋で、電話をかけているのを…たまたま、目覚めてトイレに行ったときに知った。 英語で話してたから、たぶん…海外に電話していたんだろうと思うけど。 低くて、厳しい声で。俺に話しかけるときの道元坂とは大違いで、怖いって感じたよ。 部屋をのぞいたら、すげー鋭い目で書類を睨んでて…心の底が震えた。あれがきっと、仕事をしているときの道元坂なんだろうなあ。 あんな怖い表情に、怖い声で…まわりはどう思ってるんだろうか? 怖れられているのかな? 俺だったら、あんな怖い上司は御免だよ。 胃潰瘍にでもなっちゃいそうだな。俺は寝返りを打って、珍しく横で寝ている道元坂の腕に絡みつく。 あれ? なんか腕が細い。 俺が薄眼を開けると、にこにこと微笑んでいるライさんが隣にいた。 「え? あれ? …ライ…さん?」 「はい」とライさんが、笑顔で答えてくれる 「ライさんっ!」 「なんですか?」 「ライさんだぁ」 俺は満面の笑みで起き上がってから、ライさんに抱きついた。 ライさんは、よしよしと言わんばかりに俺の背中を撫でてくれる。優しく温かい手に、俺は勝手に涙があふれてくる。 「ライさんっ、生きてて…良かったよぉ」 ぎゅうっと俺はライさんの身体を抱きしめる。 ライさんは、兄貴と同じ匂いがした。すごく心地良い匂いに、俺はぽろぽろと涙が流れて、止まらなかった。 ライさんが生きてた。まるで、兄貴が生きてたって感じがして、胸が熱くなる。 ライさん、俺……めっちゃ嬉しいよ。ライさんに会えて、俺、すっげえ興奮してる。 「ライさん、ライさんっ…ライさん」 俺は止めどなくあふれてくる感情を抑えられなくて、何度も何度もライさんの名前を呼んだ。

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