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第5話
「長いお別れ、なんてね。向こうの浮気癖に耐えかねちゃった」
それでも笑う彼は、泣くのを我慢しているのかグラスの中の残りを一気に飲み干した。
「それでも、最後にはオレの所に戻って来てたから……いつかオレだけを見てくれる日が来るって信じてたんだ」
どちらが良いのだろう。
片思いのまま、気持ちを告げずに終わる恋と、思いが通じているのに報われない恋とでは。
相手の熱を知っている分、後者の方が失恋の痛みは深いのかもしれない。重ね合った肌と肌の温もりを、ふとした瞬間に思い出して疼いたり虚しくなったり。
そんな空虚感がないだけ、俺の失恋はマシだ。失う物が何も無いのだから。
「貴方は、凄く一途な人に見えるね。貴方に思われていた人はきっと、幸せ者だね」
「……そうでもないよ」
俺だって男だから性欲はある。溜まるものは溜まるし、定期的に抜いたりもする。親友を無理やり押し倒して犯す妄想だってしたし、色んな妄想をしてオカズにした。
手を出さなかっただけで頭の中では何度も親友を穢して、その度に自己嫌悪して。
それなのに平気な顔して会っていた。脳内には乱れて許しを乞う親友が残ったままなのに。
「タイプの奴がいたら口説いたり、やる事もやってたし。一途なんかじゃない。一晩限りの相手にヤツを重ねて欲を発散させるような最低な人間だよ、俺は」
ずっと片思いしていたからといって綺麗な記憶ばかりじゃない。俺の中にだって人並みに欲はある。
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