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第11話

 もう彼を傷付ける奴がいないのなら安心だ。  あんなに酷い目にあっても相手のことを悪くは言わない、そんな彼の芯の強さを垣間見て何故か距離を感じた。  恋愛の敗者同士だと思っていたのは俺だけなんだと、気付かされた。  俺は本当に、彼の中では雨の日限定の慰め合いが出来る相手だったんだ。 「もう、雨が降っても来ない方がいいみたいだね」  脱ぎ散らかした服を一つ一つ拾って、身につけていく姿を見ている事しか出来なかった。これ以上、彼に溺れたら雨の日だけだなんて割り切れなくなるから。 「じゃぁ、帰るね」  今ならまだ、引き留める事が出来る。  もう別れているんだったら天気なんて気にしないでもいいじゃないかと言って、抱き締めることが。  だけど俺が出来たのはたった一言、後ろ姿の彼に告げる事だけ。 「俺は晴れの日にも会いたかったよ」  足を止める事もなく彼は去って行く。  残されたのは雨音だけ。

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