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依存症1

※冒頭に戻ります 結局誘惑に負けてマンションまで付いて来てしまった 「...お邪魔します」 早く。と促されて手を引かれ、躊躇しながら靴を脱いで部屋に入ると爽やかなミストの香りが鼻をかすめた 黒を基調とした殺風景な部屋からは生活感があまり感じられない 「凪くんも賄食べてないでしょ? 簡単に何か作るから座って待っててね」 テレビ観ててもいいよ。とリモコンを渡されたので電源を入れてそのまま点いたチャンネルの深夜番組を何気なく眺めた 店長はジャケットを脱ぐとキッチンに向かい俊敏に料理の準備を始めた 俺も何か手伝った方が良いかなと思ったけれどあまりにも手際良く作業をこなすから逆に邪魔になるんじゃないかと思い大人しくソファに座って待っている事にした 黙々と調理を進める店長の様子をぼんやりと眺めていると、ふわりと美味しそうな匂いが漂ってきて無意識に頬を緩ませると不意に視線が重なってニコリと和やかに微笑まれて咄嗟に目を逸らした なんだこの状況... 自然な流れで店長がキッチンに立ち自分の分まで御飯を作ってくれていて、俺がその姿を興味ありげに見つめていて視線を交わして......って、これじゃまるで恋人同士の様じゃないか 俺達はそんな微笑ましい関係じゃない 例え店長が同性愛者だとしてもこんな尽すみたいな振る舞いを俺にする必要はないんじゃないか ただ性欲を満たしたいだけならそのまま寝室に誘ってやることやって用が済んだらさっさと俺を帰らせればいいだけだ。 今こうしてほのぼのとした時間を俺と過ごすのは無駄な時間なんじゃ? いや、そもそも俺が店長の家に上がり込んでいる事自体が可笑しい状況なんだろうけど でも前に店長の裸(あまり凝視できなかったけど)を見た時に、この人なら普通に抱けるかもとか思ってしまった。 そして1度性的な目で見てしまった相手と2人きりにのこの状況で何も意識せずに寛ぎながら待っている事なんて出来る訳がない そして視線は無意識に店長の艶っぽい唇や袖を捲って露になった色白の腕に向いていて、単純にエロいなぁなんて思ってしまう 「今エッチな事考えてたでしょ」 「えっ...」 そんな露骨に顔に出てた? てか俺今どんな顔してたんだ? 吃驚した様に店長の顔を見上げるとふふっと軽く微笑んで、綺麗に盛り付けられた料理をテーブルに並べた 「冷めないうちに召し上がれ」 どうぞ。と目の前に出されたのはトマトと魚介のパスタ、野菜たっぷりのコンソメスープ、アボカドとモッツァレラのサラダ 作りたてのパスタとスープから温かい湯気が上がり、それをぼんやりと目で追いかけた トマトと魚介のパスタ... お店のメニューにはないけれど俺の好きな組み合わせ 「いただきます」 もしかして俺の好みを把握して... いや、な訳ないか きっとただの偶然 「凪くんトマト系のパスタ好きでしょ?あとシーフードも」 「え」 驚いた拍子にホークに巻き付いていたパスタがスッと解れた 確かに賄でパスタの時は毎回決まってトマト系のパスタをリクエストする そして付け合わせのサラダに毎回追加で小海老や帆立を乗せてくれていた それってもしかして... 「ふふ、お気に入りの従業員の好みくらい把握してるよ? サラダのトッピングは凪くんにしかしてないから皆には内緒ね」 人差し指を口元に当ててゆるりと微笑む 「お気に入り...」 その言葉にカァッと顔が熱を持ったのが分かった

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