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とまどいながら【14】

別に、その手を振り払う事もできたと思う。 軽く受け流して、酔っぱらいの冗談だと笑って背中を向けたところで、俺を非難する人はいないだろう。 だけど俺にはシンさんを拒む事はできなかった。 俺の背中に回る手がなんだか怯えて、震えているように思えたから。 ああ、違う...何より俺自身がシンさんに触れていたかった。 深くは尋ねず、促されるままシンさんに着いていく。 部屋のドアを開けた途端、改めてシンさんが俺の首に腕を絡め唇を合わせてきた。 さっき俺が力任せに仕掛けたキスとはまるで違い、一度だけフワリと唇を重ねると舌先で表面を擽り前歯で軽く噛んでくる。 その舌と歯の感触に、ビリビリと背中に電流が走った。 たったそれだけの事が、あっという間に俺の体温を上げていく。 「航生くん、ベロ出して?」 鼻を擦り合う距離でシンさんは艶かしく微笑んだ。 俺と同じ酒を飲んでたはずなのに、なんだか甘い香りがする...... その香りに酔わされる...... まるで呪文でもかけられたように、俺は大人しく舌を目一杯伸ばした。 その伸ばした舌の先に、チュッチュッと音をさせてキスをする。 モヤモヤする...もっと触れたい、触れられたい...... 今までこんな事を思った事があっただろうか。 舌先だけに与えられる僅かな唇の感触がもどかしくてしかたない。 思わず先をねだるようにシンさんの体を強く抱き締めてしまう。 そんな気持ちが伝わったのか、クスッと笑ったシンさんもゆっくりと舌を伸ばしてきた。 お互いのザラザラとした表面を擦り合わせ、裏側の筋をなぞり合い、絡めた舌をシンさんが自らの口内へと招く。 少し大袈裟なくらいチュポチュポと音をさせ、それを唇と舌全部を駆使して扱く様は、まるっきりフェラチオをされている気分だった。 その意識が伝わるようにじわじわと下半身に熱が集まり、甘く鈍い痺れが走る。 思わず引きそうになった腰が、首筋からそっと下りてきたシンさんの手で元へと戻された。 ゆっくりと顔を離しながら、シンさんはトロリと蕩けたような笑みを浮かべる。 「少しは感じてくれた?」 なんと答えればいいんだろう。 からかわないでと拗ねるべきか? 少しどころではないと素直に認めるべきか? 言葉が見つからず、きっと俺は困った顔をしてたと思う。 シンさんはそんな俺を優しくてイヤらしい目で見つめ、満足そうに一度キュッと抱き締めると体をそっと離した。 「すぐのそこのドアが風呂。先入っといで...汗かいたやろ?」 靴すら脱いでいなかった事にその時初めて気づく。 急いでスニーカーを脱いで無言のまま頭を下げると、慌てて風呂場に飛び込む。 トイレと湯船が一緒になった、小さなユニットバス。 俺の所みたいに無いよりはマシだけど、それでもこのタイプの風呂はやっぱり狭い。 カーテンの裾を浴槽に引っ張り込むと、俺はシャワーのコックを捻った。 シンさんは...本気なんだろうか? まあ、俺にわざわざ『先に風呂に入れ』って言うくらいだから、酒のせいで欲情してるにしてもそれなりに本気なんだろう。 ......やっぱ中、綺麗にしとかないとダメだよな...... 綺麗で甘い顔をしていながらタチ役の時の激しい攻めっぷりが有名な人だし、プライベートでもどちらかと言えばタチが好きだと以前インタビューで答えていた記憶がある。 結構酔ってるみたいだからアソコが使い物になるのかどうかは別として、今セックスがしたいと思ったのなら当然俺を抱きたいという事なんだろう。 怖い...... シンさんを受け入れる事がじゃない。 『抱いても面白くない体だ』と思われる事が。 せめて、これからも憧れる事を許される程度には喜ばせたい。 人の家の風呂場で勝手な事をと思いながら、俺はシャワーヘッドをそっと外した。 ゲイビに出ていた頃には『簡単だから』って理由で浣腸を使う事が殆んどだった。 本当はあまり使わない方がいいと知ったのは、ゲイビを辞めて普通のAVに移ってからの事だ。 シャワ姦は、ビデオの中で一度強引に相手役にされただけだったかもしれない。 上手くできるかどうか不安が募りながらも、今はただシンさんを受け入れる為には必要な事なのだと自分に言い聞かせる。 俺は恐る恐る左手で尻を左右に割ると、水の激しく溢れる先端を体の中心へと近づけていった。

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