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とまどいながら【20】
たっぷりと自分のモノに被せたコンドームの上からローションをかける。
十分にほぐしたつもりだし潤いも問題は無いだろうけれど、念のために手のひらで申し訳程度に温めたローションを窄まりの周囲から中へともう少しだけ足した。
微笑むように静かに息を吐くと、既に顔から首までを赤く染めたシンさんが俺の方を振り返る。
「航生くん...エエからもう...ちょーだい?」
イヤらしいはずの言葉。
だけど何故かシンさんはすごく幸せそうで、イヤらしいって言うよりもやっぱり...ただ綺麗だ。
俺は自分のモノの中ほどを軽く握り、奥まった場所に頭を数度擦り付ける。
一瞬そこにはキュッと力が入ったものの、まるで俺を待ってくれているかのようにすぐに綻び、柔らかさを取り戻した。
挿入の辛さを知っているからこそ、俺を受け入れようとしてくれている事自体が嬉しい。
何度も擦り付け、粘膜に俺の肌を少しずつ馴染ませれば、いつの間にかちょっと押し付けるだけで頭の先はクプと簡単に潜り込めるようになった。
少し押し付けては離し、また少し押し付けては離し...何度もそれを繰り返すうちに、それがごく当たり前のように中にめり込んでいく面積が増えていく。
「エエんやで、ガッと来てくれて」
「あ、はい...でも...今日は、俺の思う通りにさせてください......」
自分が上手ではないなんて百も承知だ。
ならばせめて、この綺麗な体を傷つける事の無い抱き方をしたい。
それが今の俺にできる精一杯の誠意のように思えた。
よほど悲壮感でも漂わせていたんだろうか。
俺のそんな様子にシンさんはスッと目を細めて小さく頷き、またその顔を枕の表面に埋める。
慎重に、それでも馴染ませたローションが乾かないうちに...ゆっくり拓いた奥へと続く道が閉じてしまう前に......
微かに聞こえる息遣いに自分の呼吸を合わせ、力の抜けるタイミングでグイと先端に力を込めた。
もしかすると、俺がタイミングを合わせようとしている事に気づいて、シンさんが俺に吐息を聞かせてくれていたのかもしれない。
もうガチガチで無駄に大きく張り出している先端部は、思っていたよりもずっと簡単に飲み込まれていく。
それでもそれを簡単だと思ったのは俺だけで、シンさんの体には一瞬強張るように力が入り、ハッハッと意識して大きく息を吐こうとしているのがわかった。
深く繋がるには避けられない事とはいえ、痛いか苦しいか...とにかく不快な思いをさせているには違いない。
少し様子を見ようとそれ以上無理に腰を進める事はせず、ベッドの脇に置いてあったタオルで簡単に左手のヌメリを拭った。
うっすらと筋肉の浮かぶ背中をゆっくりとさすり、妙に艶かしく括れて見える脇腹を擽る。
そのまま左手をそっとシンさんのぺニスに添えた。
それこそ下生えの奥に潜り込みそうなほど縮み上がっているのではないかと思っていたそこは、決して大きくはなっていないものの、中心には間違いなく熱を残している。
「せえから...大丈夫って言うたやろ? 俺は航生くんにもっとされるのんを待ってるんやで?」
前から回ってきた手が俺の手に重ねられ、俺の手ごとそこを撫で扱き始めた。
たちまちそこは息を吹き返す。
「ほら...な? 平気やって、どんな風に抱いても。そんなん、俺と航生くんやと...キャリアがちゃうよ」
ツキンと胸が痛む。
まるで俺なんて眼中に無いと言われてるみたいで。
俺のテクニックでは何をどう頑張っても大差ない言われてるみたいで。
せめてもの気持ちすら否定されたようで、そのまま腰を引いてしまいたくなる。
「航生くん、エエねん...こんな体、優しい抱こうとせんでエエから...もっと好きなようにメチャメチャ抱いたらエエんやから...誰とセックスしたって気持ちようになれる、こんな情けない体......」
掠れて聞こえてきた声にハッとした。
まただ...また自分を哀しく嘲る言葉。
自分は汚いとでも言いたげなその声に、俺が考え違いをしていると教えられる。
シンさんは、俺のテクニックがどうと思っているんじゃない。
これまで自分が不本意なセックスに散々溺れてきたと言ってるんだ。
望まないセックスを繰り返してきたと。
優しくするな...さっきもそんな事を呟いていた気がする。
優しくされ慣れていないのだろうか?
いっぱい甘やかし甘やかされて、幸せで泣きたくなるようなセックスを知らないのだろうか...充彦さんと勇輝さんのような、あんな激しくて甘いセックスを。
ならば、それを知らない俺と同じなんじゃないのか?
体の経験には大きな差があるかもしれないけれど、気持ちの経験はそれほど変わらないのかもしれない。
だったら尚更...俺がどの程度できるかはわからないけれど......
「シンさんは、とっても綺麗です。こんな綺麗な体を乱暴に扱うなんてできません」
精一杯甘やかしてあげよう。
ほんの少しでも幸せだと思えるくらい、大切にしてあげよう。
......たとえセフレでしかなくても、俺を選べば幸せな時間が過ごせると思わせたい。
ピタリと止まっていた腰を、俺はゆっくりと押し進めていった。
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