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悋気は恋慕に火を灯す【17】

瑠威は意識も無いまま脚を大きく開かれ、チンコもケツの穴も晒け出す格好で膝と肘とを縄で結ばれた。 ゴーグルマン達のハァハァと荒い息とかくっきりと盛り上がってるブリーフの股間が、俺の嫌悪感を増長させる。 ......あれは...この世界に入る前の俺の姿か ......しばかれ床に転がされ、縛られて更にどつかれて踏みつけられて。 自分が壊れてしまうって思うて風俗辞めるきっかけになった時は、まさにあんな格好やった。 会った事も無い瑠威が可哀想で可哀想で、なんか胸が痛い。 目を閉じたままの瑠威の口に猿轡を噛ませると、一人の男がバイブレーターを取り出した。 それにゴムを被せるでもなく、ローションを纏わせる事もなく、ペッと唾を吐きかけるといきなりその先端を穴に押し付ける。 モザイクをかけざるを得ないチンコとは違い、挿入に至るまではそのままを映してもお咎めは無いアナル。 瑠威のそこはまだ色も薄く固く閉じてて、まったく慣らして無いのが一目でわかる。 その固く閉じた所に、よりによってソイツは唾でほんの少し湿らせただけのバイブを遠慮なく一気に突っ込んだ。 その衝撃に意識が覚醒したらしい瑠威は、猿轡のせいでくぐもってしか聞こえへん悲鳴を上げる。 俺だけやなく、みんなその画面を見ながら唇を噛んでた。 あんな事されたらどれだけ辛いか苦しいか、ここにおるみんなわかってるから。 ビクビクと体を跳ねさせる瑠威に、男らはかなり満足してるらしい。 顔中をベロベロ舐め、肩にも二の腕にもくっきりと歯形をつけていく。 『瑠威ぃ、苦しいか?』 ゴーグルマンの一人がニヤニヤしたままバイブを握り、それをズッズッと大きく出し入れを始めた。 ウーウーとだけ呻き声を上げながら、瑠威はブンブン頭を振る。 もう一人は、面白そうに小さめの乳首をチュッと吸って無理矢理勃たせると、そこにクリップまで付けた。 動きが自由にはなれへん瑠威の体は、ビクンと不自然な姿で大きく反り返る。 さっき瑠威を絞め落とした男...藤巻が他の二人に猿轡を外すように合図を送った。 この綺麗な体や顔だけやなく...あのセクシーな声も瑠威の大きな武器なんかもしれん。 あいつらは、あの声で上げる悲鳴を聞かせたいんやろう。 嗜虐思考なんてあるわけはないけれど、それでもその声を聞いてみたいと思う自分がおる事に心底驚いた。 けど予想に反して、猿轡を外された瑠威の口からは悲鳴なんて出ぇへん。 必死に不規則な呼吸を繰り返して体の力を抜こうとしてるだけ。 意表を突かれたんは俺だけやなかったらしく、ゴーグルマン達もお互いの顔をちょっと見合わせてた。 目と目で何やら合図を送り合い、またしてもあいつらは持ち場らしき場所に戻る。 バイブのズコズコが再開され、乳首のクリップをピンピン爪で弾かれ、また顔を涎まみれにされた。 せえけど瑠威は、やっぱり声を出せへん。 唇を噛み固く目を閉じ、ただ体を震わせてる。 焦れたんか、それともただ単に次の段階に進む為のセリフやったんか、カメラを肩口に伴って藤巻が瑠威の顔を覗き込んだ。 『綺麗な顔と体がボロボロにされていくご感想は? ここで土下座して俺達の足を舐めながら、これから俺達の犬になりますってお願いしたら止めてやるぜ?』 苦痛に歪んだ顔に向かって唾を吐き、そんな言葉を藤巻が口にしたその瞬間...その瑠威が閉じたままやった目をカッと開いた。 ゾワゾワと、感じた事の無い興奮が背中を走り抜ける。 開かれたその瑠威の瞳は...怒りのせいかギラギラしてた。 体を傷つけられ拘束されて、おまけに辱しめられる事で心までボロボロにされてるこんな状況で...... 俺はボロボロになって心を壊してしまいそうになったこんな状況で...... それでも瑠威の心は折れてなかった。 それどころか、真っ青な顔して渇いた血が唇にも顎にもこびりついてんのに、そのカッサカサの唇をニヤッと笑った形に歪め、口の中に残ってた血ヘドをペッと藤巻に吐きつける。 『だ~れがお前らの犬になんかなるかよ、バ~カ。そんな事するくらいなら、ケツが裂けて死ぬ方がマシだっての』 そいつらを睨みつける瑠威の目は、ますますギラギラと強い光を放つ。 その目の力に...そしてその力の持つ意味に...俺の胸はギュッと締め付けられた。 「......と、まあこんな感じ」 「な~るほどねぇ...あの目と気の強さが瑠威の真骨頂...ってわけだ?」 「せえけどさ、さすがにあれはヤラセやろ。なんの下準備も打合せも無しであそこまでやられてさ、今もモデル続けてるとかありえへんやろ?」 「わえもそう思うよ。あら、なんぼなんでもやり過ぎちゃある。社長、あの後どないなんのん?」 「瑠威、最後まで泣けへんし許しを乞うこともせえへんかったよ。何回も失神するくらい責められて傷までつけられてんのに」 「ほら...な? ヤラセやなかったらそこまでできへんて。撮影の範疇超えてるもん、ドッキリにしたら」 みんな、ちゃうで...間違うてる。 あれはたぶんガチや。 本気で襲われて、本気で抵抗してん。 それに、気が強いから睨みつけてたんやない、気が強いから謝れへんかったんやない。 自分は負けへんて思い込んで強がってなかったら、壊れてまいそうやったんや。 俺は壊れるって思ったからこそデリの仕事辞めた。 いや、辞められた。 せえけど瑠威は...壊れたらあかん、辞めるわけにはいかんて思いで精一杯意地張って自分を守ったんやと思う。 なんでそこまでしなあかんねやろ? 何にそんな必死でしがみついてんねやろ? みんなにはただ挑発的で力の強い目に見えたんかもしれんけど、俺はその奥に隠しきれてない哀しみみたいなもんを感じてた。 あの目が胸に焼き付いて離れへん。 あの声が耳にこびりついて離れへん。 助けて...あげたい...... 「大原さん...あの瑠威をうちに引っ張る事ってできへんの?」 思わず出てた言葉。 自分で言っといて、ちょっとビックリする。 「アスカ...お前何を言うてんの?」 「あ、いや...あんだけの男前やったらさ、うちに来た方が人気出ると思えへん? 会社としてもさ、俺らと絡ませたら面白いビデオ作れるやろうし、当然売上も見込めるやん。俺もあんだけ気の強い坊やがどんなセックスすんのかメッチャ興味あんねんもん」 わざと軽い調子でヘラヘラと笑って見せる。 気づかれてないやろうか...仕事なんか関係なく、ただ俺が瑠威を助けてあげたいだけやって。 俺を助けてくれたみたいに、大原さんなら瑠威も助けてくれるんやないかと思ったって。 俺のそんな気持ちを知ってか知らずか、大原さんは、ちょっと肩を竦めて首を振った。 「元々フリーでやってるんならともかく、ゴールドラインに現役で所属してるからなぁ...一旦引退して、ほとぼりが冷めてからの再デビューならそれもできるやろうけど、現役バリバリをいきなり引っ張るんはさすがに難しいやろうな。何より今あそこのドル箱やから簡単に手放す事もせえへんやろうし。そうやな...まあ、威とのトレードでやったら応じるかもしれんけど」 威...を? 確かにヘラクレスが威を欲しがってた事考えたら、そのトレードなら成立するんかもしれん。 せえけど、威をあんな会社に行かせてええんか? さっきのボロボロにされてた瑠威の姿が甦る。 いつでも俺に優しい威が...... 俺らのムードメーカーである威が...... ヘラクレスでの撮影を泣きそうになりながら嫌がってた威が...... あんな姿にされていいわけがない。 「威とトレードとか、ありえへ~ん。俺ら4人でJUNKSやし。そしたらあの坊や入れんで良かったってくらい、これから頑張らなあかんな」 キリキリって胸が痛む。 「そういう事。これからも日本一の売上があって日本一モデルを大切にしてんのはうちで、日本一人気のあるモデルはJUNKSやって堂々と言う為にも、ちょっとだけ方針転換を図ろうと思うてる」 「方針転換?」 「みんなには悪いんやけど、今後はちょっとだけハード路線に足を突っ込ませてもらう。勿論今まで通り、仲良くイチャイチャが中心ではあるけど、体を傷つけない程度の拘束・縛り・3P4Pは解禁にしたいんやけどな...どうや?」 「上等! あんなヤラセ陵辱なんかおもんないってみんなが気づくくらい、ハードでエッチで気持ちのええビデオ作ったろうやん」 「俺も頑張るよ。体ももっと鍛えて、瑠威なんかよりもっと綺麗な筋肉見せたんねん」 「わえもできる事ら少ないけど、トレードしやんで良かったってみんなに思うてもらえるように、まだまだテクニック付けら」 「......俺がほんまもんのトップやって見せつけたるよ」 せめて俺らが圧倒的な力を見せる事で、瑠威の撮影方針が少しでも変わればいい...胸に焼き付いたあの瞳が曇らない事を祈りながら、俺は軽口を叩いて中指を立てて見せた。

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