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悋気は恋慕に火を灯す【26】
イベントが終わってからすぐ、信州にあるあんまり観光客が行けへんようなスキー場に撮影に行った。
スキーやってボードやって、『今回は大盤振る舞いや!』なんて大原さんの大号令で、スノーモービル(インストラクター付き)まで用意されて。
カメラ回ってんのも忘れて、俺らは子供みたいにはしゃいだ。
もう春先で、雪はかなり重たなってる。
すぐに体はベタベタになって冷えきって、それでも俺らはいつまでもいつまでも雪の中で遊んでた。
さすがに寒なってきたのと、十分な映像が撮れたからって事で大原さんからストップがかかり、そこから少しだけ車で移動して小さい宿に入る。
一応スキー客目当ての旅館なんやけど、今はもうベストシーズンからは外れてるからかほぼ貸切状態らしかった。
俺らをちょっと胡散臭そうな目で見つつも貼り付けたような笑みは崩さないご主人に、全員精一杯爽やかな作り笑顔で深々と頭を下げる。
それぞれ手には、布団一式を抱えていた。
ちゃんと撮影の内容を伝え、どこの旅館なんか絶対にわかれへんようにするって約束をしてるはず。
ついでに、万が一汚す事になっても大丈夫なように布団は今回のように全部会社からの持ち込みにしてある。
ここまでせんとビデオの撮影ができへんのはちょっと辛いけど、それでもまあ許可してくれる宿があっただけでもありがたい。
先に用意してもうた夕食をみんなで食べ、そっからは脱衣卓球やのポッキーゲームやの、ワイワイしながらの軽いエロっていつものノリに入った。
気づいたら、俺一人が全裸。
3人に囲まれてあっちからもこっちからもキスが降ってくる。
これもいつものノリ。
最初は冗談みたいな遊びのチュー。
ふざけて顔をペロペロ舐めたり、カプカプと唇を甘噛みし合ったりと、まるで子犬がじゃれてるように体と顔を寄せる。
ただし、ここからがいつもとは違う。
相手を変えて攻守を変えて、とにかく全員とやりまくるのがうちのリゾート物シリーズの定番なんやけど、今日はひたすら俺が攻められる事になってた。
ふざけて鼻の頭に噛みついたりしてたはずの武蔵は、いつの間にか唇を深く合わせて俺の舌を引きずり出す。
威は乳首をつまみ上げ捏ね、ギリギリと噛みつき、翔ちゃんは俺のチンコを根元まで咥え込んだ。
それは見せる為のセックスやない。
ただひたすら俺を感じさせ乱れさせる為の行為。
大原さんもそれを止めようとはせえへんから、素直にその快感に溺れていく事にする。
「アスカ...俺が男が好きな人間やったら...お前はどうしてた?」
丁寧に後孔をほぐしながら、武蔵がそっと耳に吹きかける。
「どうしてたって...?」
武蔵に触れられれば、俺の体が拓くなんて時間の問題。
体の力を抜いてその時を待ちながら、武蔵に問い返す。
「俺と本気で...付き合うてくれてた?」
その言葉に俺は真っ直ぐ武蔵を見た。
声のトーンよりずっと真剣な瞳に、その言葉の意味をうっすらと理解する。
せえけど、今の俺がそれを理解した所で...何もどうもできへん。
「男好きでも女好きでも...武蔵は俺の最高の相方やで」
「......そらそうやな」
ぐぐっと中を押し開く圧倒的な存在に『ヒッ』と息を詰める。
いつもなら体を起こし、俺の両足を大きく開いてカメラにハッキリとピストンが見えるようにするタイミング。
せえけど今日は、上半身を倒してぴったり胸を合わせると、俺の体を強く抱き締めたままで腰の動きを大きくする。
俺も武蔵の腰にしっかりと自分の脚を絡め、その腰を思いきり引き付けた。
「アスカ...アスカ......」
心地好い声がちょっとだけ震えてる。
気がつかんうちに、俺の肩口はしっとりと濡れてた。
武蔵の顔を見んでもええようにその背中に手を回す。
俺を追い上げるんやなく自分の思いをぶつけるみたいな武蔵の動きは、気持ちエエって言うよりも胸が痛かった。
「武蔵...武蔵、ありがとうな...お前が最初の相手役で...ほんまに良かった......」
放出を促すみたいに、キュウとケツに力を入れる。
仕事やない時の武蔵はそんなもんなんか...相手役をイカせるまで絶対にイカへんのが自慢やったはずが、呆気ないくらい簡単に俺の中に欲を吐き出した。
「...ごめん、なんかめっちゃ早かった......」
心底申し訳なさげに武蔵がポツリと呟く。
アホやなぁ...俺に『見せるセックス』を教えてくれたんは、お前ちゃうんか?
まだ硬さを保ったまま俺の中に留まっている武蔵自身をキュウと締め付ける。
......さあ、いつもの俺達らしくラストを飾ろうか
「まだまだこれからやん。ギブアップするまでヤリまくるで」
強引に武蔵の半身を起こさせ、そのまま俺が上になる形を取らせる。
涙を滲ませて傍らで見守ってた威と翔ちゃんを近くに手招きすると、ふたりをそれぞれ左右に立たせてチンコをしっかりと握った。
「もっともっと感じさせてぇや...みんなの体、忘れられへんように......」
必死に武蔵の上で腰を振りまくり、左右の手で二人のチンコを丁寧に扱く。
俺は三人のチンコに弄び、弄ばれながらラストにふさわしいであろう最高に幸せで最高にイヤらしい笑顔を作った。
**********
明け方と言うにはもう太陽が高くに見える時間。
三人から攻められまくってボロ雑巾みたいになって寝てた俺の肩がトントンと叩かれた。
ゆっくりと目を開ければ、そこには武蔵の乳首。
どうやら腕枕なんてもんで寝てたらしい。
寝る前に風呂には入ったけど、浴衣どころかパンツ穿く元気もなかったんか、俺はまだ全裸のままやった。
他の三人はパンツだけは穿いて寝てて、ちょっとムカッとする。
裸で寝てもうてても、誰かパンツくらい穿かせてくれたらええんちゃうの?
「悪いな、起こして」
枕元から聞こえたんは大原さんの声。
肩を叩いたんはこの人やったらしい。
「いや、別にかめへんけど...とりあえずパンツちょーだい」
武蔵の腕をどけて体を起こすと、目の前にパンツが差し出された。
ゴシゴシと目を擦りそのパンツを受け取ると、ノソノソとそれに脚を通す。
「お疲れやな」
「あったり前やろ! 何回ケツにチンコ突っ込まれたと思うてんねん...俺もう白いザーメン出えへん...今日はボードなんかできへんで~」
「そんなもん、今日はさせへんっちゅうねん。それより......」
大原さんが俺の目の前に自分のスマホを突き出してくる。
それを受け取り画面を見れば、それは誰かからのメールらしい。
「何? 読んでええの?」
「そのために起こしてん...木崎さんからや」
その名前を聞いて、何か急ぎで伝えなあかん事ができたんやと即座に判断した。
慌てて画面を見つめる。
そしてそのメールの内容に俺は...初めて運命って言葉を信じてみる気になった。
『おはようございます。今アスカくんのラストDVDの撮影ですよね? お忙しいところ、本当にすいません。ちょっとこちらの状況がいきなり動いたので取り急ぎ。ついさっきみっちゃんから、みっちゃんと勇輝くんの二人、ビー・ハイヴの専属契約を受けてもいいと連絡がありました。また、どういう流れなのかはわかりませんが、瑠威くんも同じように専属にしたいから一緒にゴールドラインに交渉に着いてきて欲しいと担当が呼び出されてます。まだまったく事態はわからないのですが、一先ずご報告いたします。アスカくんがこちらに来る頃には、瑠威くんが正式にうちの所属になってるかもしれませんね』
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