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悋気は恋慕に火を灯す【43】

自分が不用意に吐き出した言葉にいつまでも傷ついたりしてるわけにはいけへん。 元通りさっきまで見せてた笑顔を作ると、航生くんにベッドに横になるように促す。 素直に頷き体を横たえた航生くんの上に乗り上げると、俺はそっと肌を合わせた。 僅かに浮き出た首筋の血管を、ねっとりと舌でなぞっていく。 決して大きくはないけど、俺の下の体には時々ピクンて力が入った。 睫毛を少し震わせながら、ほんのちょっとだけ俺の舌から逃げるみたいに首を動かしてるから、擽ったいんかもしれん。 擽ったいって事はちゃんと『感覚』はあるって事。 痛いも痒いも擽ったいも、何にも感じへん場所に快感を植え付ける事は難しいやろう。 ただ、今は例え不快な物であったとしてもそこに感覚さえあれば、それを『快感』にすり替えてやる事自体は不可能やない。 今首筋を舐めてる時もそうやったし、さっき体に触れた時も感じた事やけど、航生くんはわりと敏感な体をしてると思ってる。 それは...良くも悪くも。 触れられると同時に体を痛めつけられていたせいで、他人の感触=不快ってって感覚は頭にも体にも根深く残ってるやろう。 勇輝くんとのセックスで、必ずしも『不快』ではなくなってるかもしれん。 けどまだまだマイナスがゼロになった程度のもんで、体は与えられる感触を上手いこと『快感』として拾う事はできてへんらしい。 それやったら俺は、航生くんの得る感覚をひたすら優しく丁寧に、『それが快感て言うんやで』って植え付けてあげるしかない。 とにかく焦らんように首筋を舐め、鎖骨をチュッと吸いながら、左手で少し硬い髪を優しいに梳いてやる。 「航生くん、可愛い...めっちゃ可愛いな......」 鎖骨から唇を離さないままで何度も低く囁くと、そこから振動でも伝わってんのか、それとも俺に言われてるって事に興奮すんのか、航生くんの体には更に力が入った。 首から肩まで、ヌラヌラと唾液の跡を残しながら、そっと右手で小さな豆粒みたいな乳首に触れる。 まずは人差し指の腹でそこを優しく擦ってみた。 それからピン、ピンと数度爪で弾き、軽く潰して捏ねる。 今度は親指も添えてその粒をプニプニと摘まみ、唇はゆっくりと首筋へと戻した。 襟足にフッと息をふきかければ、指の間の粒がぷっくりと芯を持つ。 「乳首、こしょばい?」 「......はい」 俺の質問に恥ずかしそうに答える航生くんがほんまに可愛いて、思わず首筋に一度強く吸い付いてから頬にチュッてキスした。 「うん、航生くんてほんまは敏感なんや? 昔ビデオでここ触られてる時は、なんも反応せえへんかったのにね」 航生くんは俺の言葉に、もったいないくらいポカーンてアホみたいな顔してる。 髪を梳いてる手を一瞬止めて真っ直ぐにその目を見た。 「なんやようわからんて顔してんね。そしたら、しっかり目ぇ開けて俺の方見てて?」 改めて首筋に舌を這わせながら、左手で航生くんの右手を取る。 そっと指を絡めていけば、航生くんがそれをギュッと握りしめた。 「ちゃ~んと見とかなあかんで?」 今度は鎖骨で止まる事もなく、そのまま唇を下へと下ろしていく。 さっきまで俺がちょっとだけ弄ってたせいでプックリした乳首をそっと口に含んだ。 乳輪ごと軽く吸い、舌で乳首をコロコロと転がす。 途端に航生くんがギュッと目を閉じ、小さく体を捩ろうとする。 無意識なんやろうけど、まるで俺を跳ね退けるみたいに動く腰を体重をかけて押さえ込み、絡めた指に力を入れる。 「ほら、ちゃんと俺の方見てってば。ね? 目ぇ開けて?」 そう、俺を見て? 今まで航生くんを虐めて苦しめて、それを喜んでる男ばっかり見てたんやろ? 悔しかった、辛かったよな? せえけど、そんな人間ばっかりちゃうんやで? 航生くんとおったらほんまに幸せで、今まで感じた事無いくらい楽しいてドキドキして...だからこそ、航生くんを目一杯気持ちよくさせてあげたいって、俺ほんまに思ってんねん。 その大好きな航生くんを触って弄って舐めてるせいで、めっちゃ興奮してイヤらしいになってる俺を見て? そんな俺に煽られて? 俺も...ちゃんと見てるから。 航生くんが、怖々みたいな顔でうっすらと目を開ける。 「シン...さん......」 視線が俺を捉えた瞬間、カリッと前歯で小さな粒を噛んだ。 グッとその歯が食い込むのを感じるくらいの強さで。 航生くんは声も出さんまんまでビクンて体を強張らせる。 すぐに歯から力を抜き、またその粒を舌全体を使って柔く舐め、転がした。 そしてまたそこを噛み、力が入ると優しく舐める...を繰り返す。 ちゃんと見てるかな...... 必然的に上目になるのを幸いと、チラリと上げた目線が航生くんのそれとぶつかった途端、ニッと笑顔を見せながら思いきり舌を伸ばした。 見せつけるように舌の先でツンツンとつつき、表面のざらりとした所全部を使ってベロンと舐める。 強めに噛む事で多少強引にでも感度を上げ、労るみたいに優しく粘膜で包む...何度もそれを繰り返された事で、航生くんは擽ったいのとは違う鳥肌を立てていた。 もっとも本人は、まだイマイチ何が起きてるか気づいてないみたいやけど。 「見える? あんなに小っこかった乳首が、こんなに真っ赤でプックリしてんの」 『ほら』って強調するみたいに更にそこを舌先でクニクニと捏ねると、航生くんは声こそ出せへんけど、目を細めて口を小さく開け、『はぁ...ぁ...ぁ......』って熱い息を吐いた。 「ここがこうやってプックリしてきたら...ほら、こっちもプックリしてきたで? な? 乳首でこうやって感じられるんやから、航生くんはやっぱり敏感で可愛いよ。恥ずかしい事やないんやで? そんなん、なんも感じへんより...ずっとエエ」 言いながら覆い被さったまんまの体をすこしだけずらし、乳首への刺激を再開しながら腿で航生くんの中心をグイと押し上げる。 そうされた事で初めて自分自身が反応を見せてる事に気づいたんか、航生くんは目を大きく開いて顔を真っ赤に染めた。

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