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悋気は恋慕に火を灯す【47】

「久し振りなんやったら、この方がヤりやすいやろ?」 ケツだけを高く掲げた状態で、航生くんがのし掛かってきてくれんのを待つ。 オドオドと戸惑いながら、そっと背中辺りから触れるんやろうか? それとも目をギラギラさせて、指の痕がつくくらいケツの肉を強うに掴みながら力任せにあのごっつい楔を打ち込む? どちらでも航生くんらしい気がするし、どちらであっても...きっと幸せや。 目を閉じ、じきに訪れるであろう手の感触に胸を膨らませた。 けど...いつまで待っても手が触れるどころか、近づいてくる気配すら無い。 少しだけ体を捩って後ろに目を遣る。 ......ああ...これは失敗した... 航生くんは戸惑ったような顔もしてへんし、欲に任せたギラギラした瞳も見せてない。 ただ何の感情も無いみたいにぼんやりと俺を見てた。 そうか...呆れさせてもうたんか...... せっかく俺の事を抱きたいって思ってくれたのに...... でもまあ、そらそうやな。 ビデオの撮影でもないのに恥ずかしげもなく自分からケツ向けて、『はい、どうぞ』なんて穴を差し出すような男、確かにドン引きするか。 それとも、後ろから改めて見てみたら、穴の下に垂れ下がってる袋の方が目に入って正気に戻ったか。 航生くんのヤりやすいようにとか、いらん事考えんかったら良かった。 あとは最後まで、全部航生くんに任せるべきやった。 「どしたん? やっぱり女より固そうな体で萎える?」 アホで惨めな自分を認めんのんが嫌で、わざとらしく腰を振りながら強がってしまう。 「そらそうやんなぁ。男のクセに超ビッチとか、普通に気持ち悪いもんな。あ、せえけどちゃんと定期的に病気の検査は受けてるし、ここんとこはバタバタしてて行きずりのセックスとかしてへんから、その辺は別に心配せんでええよ」 元々体売って金稼いでたんやし、ビデオの仕事始めるまでは手当たり次第に男引っ掛けてたんも事実。 こうやって誘うたら喜ぶ人間ばっかり見てきたせいで、航生くんも喜んでくれるなんてえらい勘違いしてたわ。 ノンケやで? それも裸で金稼いでるとか思えへんくらい、クソ真面目な男やで? ゲイビデオに散々出てたくせに、男と寝るんは苦痛でしかなかった男の子やで? なんぼヤりやすいからって、自分からケツの穴平気で晒せるような人間、気持ち悪いと思うんも当たり前やん。 このまんま航生くんが『やっぱ無理』って出て行っても傷つけへん方法ばっかり必死で考える。 やっぱりノンケに恋なんかするもんやない。 今までの自分の生活態度が悪かったんや。 どうせただの男好きやねんから、また適当な男見繕って体の疼きだけ鎮めりゃええだけ。 最悪、欲求不満でどうにもならんようになったら、大阪帰って武蔵でも呼び出すし。 ......あ、アイツもノンケやのに、仕事以外で男の相手はせえへんか... 色々考えて、けどやっぱりどこにも気持ちを着地させてやる事なんかできへんで、悔しいくらい泣きたくなる。 『どうしても航生くんが好き』で、『気持ち悪いなんて思われたない』としか思われへん。 『帰ってええよ』 そう言ってやろうとした時、航生くんがのそって動く気配がした。 ゆっくりと俺に近づくと、ケツの間に熱い塊を押し付けてくる。 ......う...そ... 「萎えてると...思いますか?」 少し機嫌が悪いんか?と思えるくらいさっきより低い声を響かせながら、ただ昂る熱を俺に教える為だけに穴の縁にグリグリとチンチンを擦りつけてくる。 ああ...萎えてない...萎えてない...全然...... さっきよりも硬いんちゃうかって感じるほどのモノをグリグリ押し付けられて、頭の中がボーッとしてきた。 俺の体見ても、俺の格好を見ても、それでも航生くんは興奮してくれてる...... 嬉しい...嬉しい...欲しい...それが欲しい...... もっと奥で感じたくて、自分でケツを左右に開く。 「あ、あのな...もう中綺麗やし、さっき洗う時に自分で適当に解してきたから...面倒な事いらんから、早よそれ...ぶちこんで...あ、あのカバンにローションもゴムも入ってるし......」 今日の俺、変や。 航生くんの顔色窺って喜んだり落ち込んだり傷ついたり。 そんなん迷惑やってわかってるけど、とにかく航生くんの事しか考えられへん。 んで今は、航生くんが冷静になって萎えてまう前に早く一つになりたかった。 航生くん、俺の事今も見てんのかな...... 航生くんが欲しいって穴がヒクヒクしてんのん、わかるかな...... 一生懸命ケツを開いておねだりする俺の手がサラッて払われた。 それを不思議に思う間もなく、俺よりも強い力で更にググッてそこを開かれる。 ......と、開かれ過ぎてちょっと捲れてもうてるそこに、生温い空気がフゥと触れた。 体が強張るよりも先に、穴の周囲をヌメヌメと湿った物がなぞっていく。 ......アカンッ! その正体に気づき、思わず腰を落とした。 せえけど俺のそんな動きなんか全然気にもなれへんみたいに、そのヌメヌメはチュクと中に入ってくる。 粘膜を直接舐められる感触に、抵抗らしい抵抗もできへんままで力が抜けた。 航生くんはそんな力の入れへん俺の腰に腕を回して体勢を戻させると、さらに舌を奥まで差し入れる。 「航生くん...アカン...アカンて...汚いから......」 そんな事させたないねん。 せえから、ちゃんと解すとこまで全部先にやってきてん。 綺麗な...綺麗な航生くんを...汚したない...... 「気持ち良くないですか?」 航生くんの声は、さっきよりももっと不機嫌そうに低くなってた。 せえけどその中に優しい、俺を気遣ってるようなモンも感じる。 「汚いとかどうでもいいし、それにちゃんと中綺麗にしてきてくれてるんでしょ? 大事なのはシンさんが気持ちいいかどうかです。気持ち良くないって言うなら...止めます」 きっぱりと言い切ったその声は今まで聞いたどんな声よりも低くて強くて、ちょっと怖くて...そしてその響きだけでイッてしまいそうなくらいにセクシーだった。

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