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悋気は恋慕に火を灯す【50】
航生くんの硬いのが、クイと穴の入り口に当たった。
振り向かせたろう、気持ちようしたろうと頭を切り替えてしまえば不思議なもんで、色々考えてガチガチになってた体からはフーッと力が抜ける。
俺らしくいればいい...今はこの時間を目一杯楽しもう。
手のひらとチンチンの先っちょでまたローションを一生懸命馴染ませてる航生くんの方を振り返ると、その航生くんの表情があんまりにも真剣でちょっとおかしなった。
「航生くん...ええからもう...ちょーだい?」
どっこも引きつるような事もなく、俺はちゃんと笑えた。
目が合った航生くんの顔がちょっと赤らんだみたいに見えたんは...気のせいなんかな?
気のせいやろうがなんやろうが、やっぱり航生くんは可愛いてかっこいい。
俺にちょっとだけ頷いて見せると、縁をなぞってただけのチンチンがチュプと侵入を試みる。
まだなんも入ってへん。
ただほんの少し入り口が広げられただけ。
それでもゾワゾワ~って全身の神経が一気に逆立った。
あの大きいて硬いのが俺の入り口を抉じ開けようとしてる...それを思い浮かべるだけでありえへんくらいに興奮してもうて、それがめっちゃ恥ずかしい。
たぶん顔も興奮しすぎてブッサイクになってるんやろうなぁと思うとそれを航生くんに見られんのが嫌で、そっと枕を引き寄せてそこに顔を埋めた。
航生くんは中心を少し押し広げては力を緩め、またローションを足してからグググッと頭を押し付けてくる。
何度も何度もそれを繰り返して、それでもいっこも中に入ってこようとはせえへん事に、ちょっと俺の方が焦れてきた。
「ええんやで、もっとガーッときてくれても」
「あ、いや、でも...すいません、今日は俺の好きにさせてください」
やたら男前な声で言われたら、それ以上の言葉が続くわけもない。
まあ航生くんの思うようにやったらええわとニコリと笑いかけ、俺はまた枕にポフンと顔を戻した。
ちょっとの変化も見逃さんと、下手くそやのに俺のエエとこばっかり遠慮なく攻めまくる航生くん。
そしたら、これも気づくんやろうか......
ふっと思い立って、体の力を抜こうと吐き出す息を、わざとゆっくり大きく響かせる。
今ごろあの大きいて鋭い瞳がひくつくケツの穴を見てるんやなぁと思うと、少し昂るようないたたまれないような......
それでも結局早く受け入れてしまいたい気持ちの方が強うて、俺はひたすら大きい呼吸を繰り返した。
ゆっくりと息を吐き始めたタイミングで、航生くんのがグーッて入ってくる。
......あ、やっぱり気ぃついた...
息を吐ききったところでピタリと動きが止まった。
やっぱり俺の様子を窺ってるらしい。
口に溜まった唾をゴクンと飲み、また息を大きく吸うと、それをもう一度ゆっくりと吐き出していく。
そのタイミングで、またズブズブって航生くんのが進んできた。
......すごい...航生くんのん...すごい...
大きな亀頭が中を押し開くと、今まであんまり感じた事のない圧迫感に呼吸が乱れる。
痛いわけやない。
苦しいのともちょっと違う。
その圧迫感はひどく心地いい。
気持ちは早く先をって望んでるけど体の準備はまだ追い付いてきてないみたいで、ハッハッて走り回った後の犬みたいな荒い息に変わる。
少し心配になったんか、ローションにまみれてたんをわざわざタオルで拭いた航生くんの手が、そっと優しいに背中に触れた。
大して浮かんでもないやろう肩から背中への筋肉をさすり、脇腹を撫でてから更に手を下ろしていく。
俺のチンチンにチョンて指が触れた瞬間、ちょっと驚いたみたいに後ろの体がピクンてなった。
遠慮がちに俺のを握る航生くんの手の上に、俺の手を添える。
「大丈夫って言うたやろ? 俺は航生くんにもっともっとされるのを待ってるんやで?」
しっかりと竿を握らせ、その航生くんの手ごと自分のんをユルユルと扱く。
中途半端なその刺激にも、興奮しきった浅ましい体は簡単に反応を示した。
一回出した後やとは思われへんくらいの勢いでグングン重さと硬さを増していく。
「ほらな、平気やって...どんな風に抱いても。俺と航生くんやと...年季がちゃうよ」
もっと楽な気持ちでええよって言うつもりやったのに......
あかん、俺アホや。
自分で地雷踏んでもうた。
そうや、何を好きやの惚れたのって浮かれてんねん...今まで散々男を抱いて、男に抱かれてきたくせに。
そんなんやから、航生くんから『セフレにして』とか言われんねやん。
急にドーンて気持ちが落ちてもうて、同時に興奮し過ぎてた体もドーンて熱が下がってくる。
「航生くん、エエねん...こんな体、優しい抱こうとせんでエエから...もっと好きなようにメチャメチャ抱いたらエエねんで...誰とセックスしたって気持ちようになれるこんな体......」
そう、誰が抱いたって気持ちようなれるし、気持ちようしてあげられる。
せえからなんも期待したらあかん。
所詮俺らは...体だけ繋ぐ関係なんやから。
せえから航生くん、俺をこれ以上勘違いさせんとって。
あんまり大事にされたら、俺ますます勘違いして調子に乗ってまう。
できるだけ突き放すような言い方で航生くんにも、そして自分にも釘を刺した。
それやのに......
航生くんの長い腕が胸元に回され、そのまま俺にのしかかるみたいにしながらギューッて抱き締めてくる。
時々歯を当てるようにうなじに、肩に唇を押し付け、フッと耳に息を吹き掛けてきた。
「シンさんは...とっても綺麗です。こんな綺麗な体を乱暴に扱うなんて...できません」
航生くんの声が...言葉がじわじわ染み込んでくる。
俺、綺麗なん?
こんな何人とセックスしたかも覚えてへんような俺を、それでも航生くんは綺麗やって言うてくれるん?
嬉しい。
たとえそれがセックスの最中の睦言であっても...俺を興奮させる為の言葉の愛撫だったとしても......
ほんまに綺麗な航生くんに言ってもらえたら、そうなんかもしれんて思える。
航生くんとおったら、俺でも綺麗になれるんかもしれんて。
「もう少し...奥まで入ってもいいですか......?」
抱き締めた腕をほどき体を起こした航生くんが、俺の腰をグイと掴む。
俺は色んな感情にまた目頭が熱うなってきて、顔を枕に擦り付けた。
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