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悋気は恋慕に火を灯す【54】
航生くんに抱き締められたまんまで上体を引っ張り上げられ、二人して膝立ちみたいな格好になる。
腕を強く戒められ、顔も声も隠す事ができへん。
ゆるっと腰を引いた航生くんは、また俺の弱い入り口に近い辺りをクチクチとねちっこく捏ねだした。
さっきと中に当たる角度が変わったせいか、それとも枕という逃げ場が無いなったせいか、その快感はもっとダイレクトに伝わってくる。
どうにか腕の中から逃げようと体を捩ってみるものの、狙ったみたいにその瞬間だけズンと強く奥を突かれて力が抜けた。
声だけでもどうにか我慢しようと唇を噛み締めて鼻だけでフンフンッて息をしてると、航生くんのあの節の張った綺麗で男らしい指がゆっくり上がってくる。
その指は噛み締めた唇の表面に触れ、なぞり、そこをこじ開けるように口の中に入ろうと試みた。
航生くんの高い鼻が俺の耳裏に擦りつけられ、舌が縁をゆっくりと濡らしていく。
「唇...噛まないで...傷つけたくないから.......」
聞こえるか聞こえないかってくらい、小さくか細い声。
けどそれは俺の耳に間違いなく届き、フッと前歯を食い込ませてた力が弛む。
それを逃す事なく航生くんの指は咥内へと押し入ってきて、優しく優しく前歯を、そして上顎を撫でた。
「声...我慢しないで...俺に感じてくれてるなら...シンさんの声、聞かせてください......」
囁く声が、俺の無駄な我慢を溶かしていく。
航生くん...俺の声、聞きたいん?
聞いてもうても引けへん?
「...っあぁ...ん...ふっ......」
枕にしがみついて顔を埋める事も、歯を食い縛る事も許されへん。
それ以上に、航生くんに『声を聞かせて』って言われたら、もう我慢なんかできへんかった。
案の定、男の俺からやけに甘ったるい声が漏れる。
それに満足でもしたかのように、航生くんの中を擦る速度が上がった。
相変わらず同じ場所を強く押し付け潰され、俺のチンチンからはビュク、ビュクとそれに合わせて先走りが溢れてくる。
それが竿を伝い、タマの裏側まで滴ってんのが自分でもわかった。
もう我慢せんでいい......
声を上げて、航生くんを欲しがってもええんや......
中を抉る力はそのまま、少しずつ動きが大きくなり始める。
粘膜を引きずられる度に腰に熱が溜まり、その熱が全身へと広がった。
熱は、抑える必要などないと言われた通り声になり、ますます俺を熱くする。
「あっ...あぁっ......」
押し出された声を喜ぶように、航生くんが俺を抱き締めてくれる腕の力が強うなった。
また中が航生くんのモノをキュウキュウ締め付ける。
航生くんは、やっぱり中の微かな膨らみをわかってるのか、痛いくらいにそこばっかり突き上げた。
そのあまりにも直接的過ぎる快感はちょっと怖いくらいで、気持ちええのとは別の震えが走る。
「あっ...んっ...ア、アカン...て...やめて...ほんまアカン...そこばっかり...もう......」
普通にイかせて欲しい......
おかしくなりそうで怖い......
おかしくなりそうなくらいに気持ちエエ......
もうこのままおかしくなって、ずっと航生くんだけを感じてたい......
頭がぼんやりしてきた...でも快感だけはやたらとハッキリ意識できる......
変や、俺...なんか、変。
入り口も奥も粘膜も、肌も耳も頭の中も、何もかも全部が気持ちエエ......
航生くんの動きは更に激しさを増し、パチンパチンて肌のぶつかる音と、プチュプチュってローションの泡立ってるイヤらしい音が大きなる。
「前、触りましょうか?」
汁はダラダラやし亀頭はパンパンやし、もうぼちぼち出さなキツイと思うたんやろうか。
変に余裕綽々の航生くんがチンチンを握って来ようとする。
俺はそれを必死に頭を振って拒んだ。
「い、いらん...あっ、わかれへん...このまま...このままイカせて...あ、違う...なんや...アカン、怖い...航生くん......」
このままイきたい。
せえけど、そんな経験も無いし...もしそんな事になったら、俺ほんまに航生くんを離してあげられへんようになりそうや。
......あ、違う...俺が離れられへん...
ただの射精とは違う快感を得た俺は、一体どないなんねやろう......
「俺がいます...怖がらないで」
宥めてるつもりなんか、フワフワと肩口に唇を落としながら、さっきとは全然違う甘い声で言う。
腕の戒めを解かれると同時に、俺の上半身はベッドへと崩れた。
貫かれたままのケツだけは高く掲げられ、腰を掴む航生くんの指が強く食い込んでくる。
「いっぱい感じて...俺を......」
その言葉があんまり嬉しいて、目尻にはちょっと涙が溜まってきた。
それをさりげなく自分の腕で拭い、チラリと後ろを向く。
俺を見つめる目がものすごい優しいのにものすごいイヤらしいて...それにまた柄にも無く感動する。
「きてぇ...いっぱい感じさせて...壊れてもエエから...俺を...幸せにしてぇ......」
数回ゆったりと大きく出たり入ったりを繰り返し、それはいきなりドンと最奥を突き上げてきた。
あまりの衝撃に勢いで体が前に大きくのめり、立てさせられてた膝も崩れる。
それにまったくお構いなく、覆い被さった航生くんはそのままで激しく中をガンガン突き上げ続けた。
それは入り口近く...前立腺を攻められていた時とはまるっきり違う快感。
吐きそうなほどの強さで内臓を押し上げられ、それ以上は進まれへんのにもっと入れさせろって広げられ、そして全身が総毛立つ勢いで襞を引き摺り出される。
......ああ、すごい...すごい...怖いくらいに...気持ちエエ...セックスって...気持ちエエ......航生くんとのセックス...気持ちエエ......
頭の中に薄く靄がかかるような感覚。
身体中が粟立ち、震えどころかピクピクと痙攣を始める。
「航生くぅん......」
今だけは...今だけやけど......
航生くんは俺のモンで、俺は航生くんのモンやんな?
ちょっとだけそう思いたなって、顔のそばに置かれた航生くんの指をキュッて握ってみる。
航生くんは俺の気持ちなんてわかるわけもないのに、キュッて指を握り返してくれた。
途端に全身の神経がますます鋭敏になる。
乱れだした航生くんの息に背中へと滴る汗に、身体中の痙攣が激しなった。
中を打ち付ける航生くんの動きに合わせて、恥ずかしくも自分から腰を揺らめかしてしまう。
「はぁっ...っ...ア...カン...航生くん...イく...イくぅっ......」
全身が強く強張る。
痙攣が大きなって、呼吸すんのもつらい。
航生くんに押し出されるみたいに熱い塊がググッてせり上がってきた。
とどめと言わんばかりに、航生くんのがもう進まれへん所を更に力強く進んでくる。
航生くんが欲を吐き出すよりも先に、俺は大きく体をしならせながら射精してた。
......初めて、前を触られる事なく。
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