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小悪魔モンモン【5】

鼻と唇と舌を駆使し下着の中の物を引っ張り出すと、慎吾さんは根元からそれを丁寧に舐め上げ始めた。 時折鼻の先が俺の敏感な所に触れるのは偶然なのか、それともわかってやっているのか...... 思わず目を閉じれば、意図しないままに腰が自然に揺れる。 「航生くん、気持ちええ?」 媚びをたっぷりと含んだ声色に薄く目を開けると、少しだけ不安げな顔で慎吾さんはまっすぐに俺を見上げていた。 精一杯の笑顔を作りながら、そんな慎吾さんの髪をそっと梳いていく。 「すごくいいです...ほんとに。でも、少しだけしゃぶってもらってもいいですか?」 「うん...ええよ。せえけど、もっと強く命令してくれてかめへんねんで? 俺、航生くんのモンなんやし...相手を好きに支配すんのんが興奮するんやろ?」 そんな言葉に、鎖の先を手にして昂っていたはずの気持ちが、何故だかスーッと少しずつ落ち着いていく。 ......俺、支配したいから慎吾さんにこんな格好をさせて興奮してたのかな? ふと心に浮かんだ疑問をどうしても確認してみたくなり、俺のモノを咥えようと口を大きく開けた慎吾さんの鎖を一気に強く引いてみた。 その途端首の革ベルトはギュンと喉に食い込み、慎吾さんの目が大きく開かれる。 その喉元を押さえてそれから逃れたいのだろうけど、慎吾さんの腕はさっき俺が後ろで拘束したままだ。 痛かったのか苦しかったのか、慎吾さんは少し前屈みになって背中を丸めると、ケホケホと咳をしながら時折小さく嘔吐くようにその背をしならせる。 ......なんだろう...全然興奮しない ......いや、寧ろ気持ちが冷めて、罪悪感のような物しか感じない その丸まった背中をそっとさすってやりながら、ただ申し訳ない気持ちになる。 背中に置かれた手の感触でふと今の状況を思い出したのか、慎吾さんは焦るように俺を見上げ、急いで股間へと顔を埋めようとした。 俺の方こそちょっと焦って、慌てて脚を閉じてそれを阻む。 「ごめ...ごめん...なさい。俺ほんまに航生くんには何されてもかめへんから! 怒らんとって! 嫌いにならんとって!」 「違いますから! しゃぶられたくないとか慎吾さんともう何もしたくないとか、そういうので逃げたんじゃないんです」 脇に手を入れて立ち上がらせると、その体をしっかりと抱きしめながら自分の太股に慎吾さんを跨がらせる。 鎖の端はベッドの下へと垂らされ、ジャラと音をたてた。 「撮影の時に慎吾さんを思い出して興奮したのも、今こうして拘束された姿に欲情してるのも間違いないです。自分の中のS的な部分だとか破壊衝動だとかってのが、たとえ少しだとしても存在するのも事実だと思います。だけどね、それは...支配欲とはちょっと違うんです、たぶん」 「......難しい事言われても、俺ようわかれへん」 「えっと...俺もハッキリわかってないから大丈夫です、たぶん」 一先ず、慎吾さんが自分で巻いた首輪をそっと外した。 俺の与えた一瞬の力は想像以上に強かったらしく、その喉元は皮が捲れ薄く血が滲んでいる。 腰をしっかりと抱き寄せながら、俺はその傷にゆっくりと舌を這わせた。 擽ったいのかそれとも傷にしみるのか、慎吾さんは僅かに首を竦め逃れようとする。 それを許さないと言うように後ろ髪に指を通し、そこを掴んで顎を上げさせた。 未だ拘束の解かれてはいない腕を必死に動かし体を捩ろうとするけれど、腰を抱き寄せる腕でそこを合わせて押さえ込めば、その無駄な抵抗を止めさせるのは難しい事ではない。 俺に向けて強引に晒させた白い首に、改めて唇を押し当てた。 ヒクヒクと触れた場所が小さく震える。 ......ああ、これだ...この方がずっと...興奮する...... 「慎吾さん、俺ね...慎吾さんを気持ちよくしてあげたいんです」 「...っはぁん...な...に...?」 その体の自由を奪われ、無理矢理傷口を舐められながら、それでいて快感に声を震わせるイヤらしい人。 なんて愛しいんだと思えば思うほど下半身が疼く。 「俺ね、たとえ自分の体が自由にならなくてもひたすら俺を欲しがって、ひたすら俺に縋りつく姿に...興奮して、堪らなくイヤらしい気分になるみたいです。苛めて傷つけて支配したいわけじゃない」 「航生...くん?」 「こうやって無理矢理抱き締められて動けなくされて、それでも俺が触るともっと触られたくてどうしようもないって姿が見たいだけなんです。だからもっともっと見てたくなるし、もっともっと気持ち良くしてあげたい。さっき慎吾さんが言ってた『相手を支配してる事に興奮する』ってのは...たぶん間違いです」 「そう...なん? でも俺は...航生くんに支配...されたいって......」 「支配...されたいですか? そんなの、きっとそこに愛情なんて無いですよ? ただ征服欲を満たすだけです」 後ろ手の拘束を外し、改めてその体を強く抱き締める。 自由になった慎吾さんの手が、俺の背中にギュッと回された。 なんだかそれだけで気持ちが満たされる。 「動けない慎吾さんが、それでも体を捩って俺を求めるって姿はすごく魅力的です。すごく興奮もします。だけどね、俺はやっぱり...こうやって抱き合いながら果てたいなって思うんです。俺だけ満足するんじゃなくて、二人で」 「......そうなん?」 「はい。だってね、一番気持ち良くて最高に興奮する瞬間を二人同時に迎えられるなんてすごくないですか? 俺は現場での経験しか無いからわかんないですけど、女優さん抱いてても顔にかけたり腹やら背中に出したりしなきゃいけないし、エクスタシーのタイミングだって合わないですよ? 男同士でも、それぞれ交代で入れあって、順番に出して終わりだから一緒にイクなんて考えられませんでした。そもそも俺なんて、ゲイビの現場では手コキ以外でイッたこともなかったですからね。それが...慎吾さんだと違うんです」 「そう......?」 「慎吾さんは俺よりずっと経験も多いし、何を今更って思うかもしれないですけど...抱き合ったまま、二人で一緒にエクスタシー迎えられるなんて考えた事無かったし、それがこんなに気持ち良くて幸せだなんて知りませんでした。だから俺、慎吾さんとは必ず最後は抱き合って幸せになりたいんです。俺だけ昂るのも、慎吾さんだけイカせるのもちょっと違うんです」 「......経験は多いけど、俺もあんな...気持ちようなったこと...無いもん。そもそも、トコロテンできな、一緒になんてイカれへんやん? 俺、触られんと発射するなんて、航生くんとした時が初めてやってんで......」 「だからもうね、これから変な遠慮はしません。優しくしないと!なんて構えたりもね。これからちょっとずつセックスの雰囲気ややり方は変わるかもしれませんけど...だけど最後は、やっぱり抱き合いながら幸せにイキたいです。ダメですか? 慎吾さんが傷つけられることに興奮するならそうしますけど、俺はできたら傷なんてつけたくない...心にも、体にも」 抱き締めたままで慎吾さんを抱え、そっとベッドの上へと上げる。 その体を横たえると、俺も隣へと転がった。 「好きなんです...慎吾さんの事が本当に。支配だのなんだの言うなら、俺の心が慎吾さんに全部支配されてるんじゃないかってくらい...大好きなんです」 腕を伸ばすと、慎吾さんが当たり前のようにそこに頭を乗せ、スリスリと顔を擦り付けてくる。 性欲と同時に違う感情がキュンて胸を締め付けて、俺は自然と慎吾さんの頭を抱え込んでいた。

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