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小悪魔モンモン【6】

「ふぅ...えへっ、今日もほんとに気持ち良かったですね」 まだ少し乱れたままの呼吸を整えようと大きく息を吐き、幸せな気分で腕の中の体をキュウキュウと抱き締める。 当然同じように抱き返してくれるものと思っていた慎吾さんは、一度冷たい目線を俺に合わせると、まるで拗ねたように背中を向けてしまった。 ......って、えーーーっ!? さっきまであんなに髪の毛振り乱してヨガリまくってたのに、終わった途端にそれ? 行為の激しさと慎吾さんの快感の強さを表すように、俺の肩から背中にかけてピリピリとした痛みはまだ残っている。 「慎吾さん...何か怒ってますか?」 「別に......」 「あの...もしかして全然気持ち良くなかった...とか? だったらえっと...ほんとすいません。俺ばっかり気持ち良くなっちゃって......」 「......気持ち良うなかったとは言うてへんやろ」 あれ? あれれ? だとしたら、慎吾さんの不機嫌な理由がまったくわからない。 とにかくちゃんと話をしなくてはと、そっぽを向いたままの慎吾さんを体ごと俺の方へと強引に向ける。 それでも顔だけは背けようとするから、その頬を両手でそっと包みじっと鳶色の瞳を覗き込んだ。 「慎吾さん、俺バカですいません。でも、ちゃんと教えてくれないとわからなくて...何で怒ってるんですか?」 「怒ってへんてば」 「だって! だって...さっきから俺の目見てくれないじゃないですか。俺が一人だけ気持ち良くなっちゃったから...でしょ?」 「......ちゃうよ。そんなん、俺も気持ち良かったってば」 「だったら一体......」 「あんなぁ......」 頬を包んでいた俺の手をペシと払うと、慎吾さんは俺の頬を同じように包んで...って、これは包むなんて可愛いもんじゃない。 両方の頬っぺたをムニッと摘まむと、ギーッて左右に思い切り引っ張られた。 い、いや...これ、かなり痛いんですけど...... 「慎吾さん...いひゃいれふ......」 「俺、確かに激しいにして欲しいとか、もっと求められたいとか言うたけど...いきなりアレはないんちゃう?」 怒ってるって言うよりは、なんだかちょっと照れたようにも見える慎吾さんの視線の先には、枕元に放り投げられたままの革の手枷。 これ、一回外したんだけど、結局もう一回着けちゃったんだよね...... 「お、俺は『もうイキたい!』って言うてんのになかなかイカせてくれへんし...しゃあないから自分でチンチン扱こうとしたらあんなん着けて自分で触られへんようにしてまうし...もうっ! 頭おかしなるかと思うたわ!」 「ん? なんで頭がおかしくなるんですか?」 そうか。 なんのことはない...怒ってるわけでも拗ねてるわけでもなくて、ただ照れてるんだ。 とにかく俺を求めて欲しくて、もっともっと縋り付かせたくて、慎吾さんの一番感じる場所を少しだけ外して攻め続けた。 必死に腰を動かし、脚をしっかりと絡めながら最後の一突きをねだる様にゾクゾクとした興奮を感じながら、ずっとそれを見ていたくて焦らして焦らして、突き放して、また攻め立てて...... 何度も繰り返しているうちに、『アカン、アカン』と涙を浮かべ鼻を啜りながら、我慢しきれず自らぺニスへと手を伸ばしてきたのを見て...つい、一度投げ捨てたはずの手枷を再びその手首へと巻き付けてしまった。 「ねえねえ、なんで頭がおかしくなるんですか?」 「こ、航生くん、めっちゃ意地悪や!」 あ、しまった。 慎吾さんの目にまた薄く涙の膜が張る。 さっきとは意味の違う涙に、少し引き際を間違えた自分に後悔した。 頬を引っ張る手を取り、キュウと慎吾さんの体を抱き締める。 「ごめんなさい、確かに意地悪しちゃいました。俺の事欲しがってくれる姿があんまり可愛いから、もっと見てたくなっちゃって......」 「......あんまり焦らさんとって...」 「気持ち良くないですか?」 「気持ち良すぎて...なんか怖なる」 「怖い? 気持ちイイのに?」 「うん...航生くんとしたら気持ちを良うなりすぎて、どんどん俺が俺やなくなってまいそうやねん......」 「じゃあ、今までの慎吾さんじゃなくて、俺の為の慎吾さんになったらいいじゃないですか。いっぱいいっぱい俺で気持ち良くなって、もっともっと俺だけを求めてください。俺は慎吾さんと会ってから、もう昔の俺じゃなくなってますよ?」 充彦さんや勇輝さんみたいに、もっと上手く話せればいいのに。 こんな時に気持ちをちゃんと伝えられる言葉を持ってない自分の頭の悪さにうんざりする。 どうしたら俺の中から溢れそうなくらいの慎吾さんへの思いを伝えられるんだろう。 少しだけ自己嫌悪に陥りそうな俺の唇に、ふわりと温かくて柔らかい物が重なった。 条件反射のように抱き締める腕に力が入る。 「俺、もっと欲張りになると思うで?」 「欲張り...ですか?」 「もっともっと航生くんと気持ち良うなりたくて、もっともっとエッチになってまうで? いっぱいしてって、ねだってまうかもしれへん」 「ああ、そういう意味ですか...いっぱいおねだりしてもらえるように、精一杯頑張ります」 「仕事ある時は、ちょっとだけ遠慮してな? 航生くんとした後やと...俺、空っぽになってまいそうやし」 「はい、そこは...善処します」 恥ずかしいのか、俺の胸元に顔をスリスリと擦り付けながら、それでも慎吾さんの右手がゆっくりと下腹部へと下りてくる。 人差し指でそこをツツツッとなぞられるだけで、俺のそこは情けないほど簡単に首をもたげた。 「慎吾さん、おイタはダメですよ」 「......言うたやん...欲張りになるでって」 「じゃあ、今度は慎吾さんが上になりますか?」 「先にイキそうになったからって、手首留めるんは...無しな?」 笑いかける俺の表情を確認する事もなく、慎吾さんは頬を赤く染めながらゆっくりと体を起こした。 歯止めの効かなくなった慎吾さんがようやく疲れて眠ってしまったのは、もうそろそろ空が白んでくる頃。 久々に精子が空っぽになったんじゃないかというくらい射精していながら、俺はまたいつか慎吾さんが何かにモンモンムラムラしてくれないだろうか...なんて次を期待して目を閉じた。

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