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フィクションの中のノンフィクション【30】

航生くんに抱かれたまま、俺らはいつものあの小さなベッドへと向かった。 航生くんの肩越しにはカメラを構えたアリちゃんが見えたけど、なんかもうあんまり気になれへん。 俺はただしっかりと航生くんの首に腕を絡ませ、風呂上がりのせいかカメラのせいで緊張してんのか、それとも少しは興奮してんのか...いつもよりちょっとだけ高い体温を感じてドキドキしてた。 胸元に顔を擦り寄せて、目一杯息を吸うてみる。 同じ石鹸使ってるはずやのに、なんで航生くんてこないエエ匂いすんねやろ。 ......あれ、なんか航生くんも似たような事言うてたな。 「あんまりクンクンしないでください。さすがにちょっと恥ずかしいですから」 「そう? でもクンクンしてるだけでめっちゃムラムラしてくんねんけど」 「俺なんてクンクンしなくてもムラムラしてますよ」 部屋の真ん中まで着いた所で航生くんがそーっとマットの上に俺を下ろしてくれた。 こうして抱えた俺を下ろそうとするときにムキッて盛り上がる腕の裏側の筋肉も好きやねんなぁ...素直にベッドに横になりながらも、俺は航生くんに触れる指を引っ込める事ができへん。 それを責めるわけやなく、ただ俺にやりたいようにさせたろうって航生くんも隣に横になってくれる。 「ちょっとだけ恥ずかしいですね...さすがに」 口許に優しい笑顔を浮かべ、航生くんが俺の首の下に腕を通した。 俺の大好きな、口角のクッキリとした唇がフワッとデコに触れる。 その唇の感触がくすぐったいような気持ちエエような変な感じがして、俺はキュッて首を竦めた。 「俺も恥ずかしい...かな? せえけどね...なんやろ...恥ずかしいよりも......」 俺よりずっとシャープな耳からエラ、顎へのラインを指でなぞる。 そのまま首筋から肩を手のひらで撫でたら、しっとりとした肌は驚くくらい俺の手のひらに馴染んでた。 「興奮してるかも。あ、アリちゃんに見られてるからとかちゃうで? ただ、ほんまになんでやろな...今、航生くんをいっぱい感じたいなぁって思ってる」 なんでかなんてわかってる。 そんな理由、ありすぎる。 アリちゃんと話してて、航生くんがどんなに俺の事大切にしてくれてるかわかったから。 昔からずっと一人で抱えてた思いを吐き出せて気持ちが軽うなったから。 その思いの強さを口にした事で、俺もほんまに航生くんが大事やって改めて実感できたから。 で、二人で風呂に入って...昂った気持ちと体を無理矢理抑え込んできたから。 デコに何回も何回もチュッチュッて押し当てられてた唇がゆっくりと下がってきて、鼻のてっぺんをハムッて甘噛みしてきた。 「俺もです。カメラの前だから少しくらいは落ち着かなくちゃって思ってるのに、それでもそんなの関係なく慎吾さんを感じたいとも思ってます」 ふざけるように鼻をハムハムしてた唇がまた少しだけ動いた。 それを迎えにいくみたいに、俺からちょっと唇を尖らせる。 求めていた物を与えるって感じで。鼻先から滑ってきた唇が俺の物にそっと触れた。 デコの時とおんなじように、またチュッ、チュッてそこを優しく啄んでくる。 肩を撫でてた俺の手は大好きな筋肉を確認するみたいにスルスル動き、広い背中をギュッと掴んだ。 それを合図に、航生くんの体がゆったりとした動きで俺の上に乗ってくる。 同時に唇同士が触れ合ってる時間が長なってきた。 大きな手が優しく前髪を梳いてくれる。 「慎吾さん、舌出して......」 思い詰めたような目で俺を真っ直ぐに見る航生くん。 言われるまま俺はベーッてベロを伸ばす。 最初は先端をペロッて舐められた。 たったそれだけでゾクッてする。 先端だけを舐めてたはずの航生くんの舌は表面のザラザラを擦り、厚みを確かめるみたいに横をなぞり、裏側の柔らかい所をくすぐった。 ゾクッ、ゾクッて背中に寒気のような、電気のような何かが走って、それを我慢しようと航生くんの背中に回した指にキュッキュッて力が入る。 アカン、めっちゃ気持ちええ...... いや、なんかもうもどかしい...... でもほんまに気持ちええ...... もっともっとして欲しなって、もっともっとベロを伸ばす。 覆い被さってるだけやった航生くんが少し体を動かすと、タオル越しにすっかりいきり立った物がコリッて俺のチンチンに当たった。 その瞬間、思いきり伸ばしてたベロがジュッと強く吸い上げられ航生くんの口に飲み込まれる。 そうなったらもう、わけがわかれへん。 背中なんか掴んでられんようになって、必死に首に腕を回して航生くんの顔を引き寄せる。 航生くんの口の中で吸われたまま舌を絡ませ、唇をしっかり合わせた。 「っん...ふっ...ぁ...っ」 いつもの撮影みたいに意識して声を出す必要はない。 ただ素直に体の熱に身を任せてるだけで、勝手に息は乱れてきた。 舌を伝い流れ込んでくる航生くんの唾液をすすれば、それを取り返そうとでもするように更に舌と唇を激しく吸われる。 航生くんの口の中にあったはずの舌はいつの間にか自分の元に戻り、代わりに入り込んできた航生くんの舌が俺の上顎を舌の付け根を、歯茎の裏側を余す所無く蹂躙していく。 体をきつく抱き締められて全身はピタリくっついて、自然とチンチン同士がグリグリとそれを刺激しあった。 すっかり形を変えて敏感になってもうてる場所には繊維の刺激すら邪魔や。 首に回したままの腕を航生くんの腰へと伸ばし、しっかりと結ばれたタオルを外そうと試みる。 片手の上に息が上がってきてるせいで上手く目的を果たせない事に気づいたらしい航生くんは、キスを止める事もないまま俺の手を自分のクビへと戻させ、いとも簡単に左手だけで結び目を解いた。 その手で俺のタオルも器用に外す。 どれくらい続いたんかわかれへんキスにすっかり力の抜けてしまった頃には、航生くんの手で二人とも生まれたままの姿へと戻っていた。

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