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フィクションの中のノンフィクション【37】
『我慢しな』『出えへんように押さえとかな』って意識が無いなった俺がエクスタシーを迎えたんは、そらもうあっという間の事やった。
全身は勿論、体の中もキューーーッて力が入って、もうその締め付けで航生くんの指なんかまともに動かされへんようになって、それでも振動を伝えるみたいに航生くんは細こうに指を震わせて......
その振動に合わせて俺の勝手に体がピクン、ピクンて跳ねて......
射精する時の一気に押し寄せるんとは違う、緩いのに逆らわれへん熱い波が体の奥の方から何回も何回もせり上がってきて......
「あ...ああぁぁっ...アカン...アカン、航生くん...あぁぁぁぁ...っ」
しっかりとシーツを握りしめ、その波に飲み込まれんようにするみたいに腰を思いきり突き上げた格好で頭の中に靄がかかった。
感覚が無いなった腰から下の力がガクンて抜けたのに、それでも全身の痙攣が止まれへん。
毛穴からブワッて汗が吹き出して、ハッハッて走り回った後の犬みたいな荒い息が続く。
この瞬間だけは、実はこの感覚がほんまに気持ちええもんなんかどうか、ようわかれへん。
身体中ものすごい強張ってたせいか今度は全然力が入れへんし、全身のあちこちがピクピクして寒気すら感じる。
でも体温自体は沸騰しそうなくらい上がってるらしいて汗は止まれへんし、目の前はなんや膜が張ったみたいにぼやけてる。
このまま死んでまうんちゃうかってくらい心臓がバクバクして、この段階では頭も体もわけがわかってへんていうか、自分がどうなってもうてんのか怖いくらい。
せえけどちょっと息が整ってくるんと同時に、まだ体の中にブスブス熱が燻ってんのに気付く。
もう、こうなったらあかん。
燻ってるだけやったはずの熱はいっぺんに燃え上がって、一気に体の中を炎が駆け巡る。
さっきの感覚が欲しい、もっと欲しい。
もっと強い刺激が欲しい、もっと奥まで欲しい。
熱が....体のすべてを焼き尽くすくらいの熱が...欲しい。
「気持ち...良かったですか?」
『見たらわかるやろ!』なんて言う元気も無いまま、無駄に爽やかに笑う航生くんをぼんやりと見る。
しっかり押さえられたまんまのチンチンがめっちゃ痛い。
「航生く...ぅん......」
止まれへん痙攣は俺の中でも起きてて、時々キュウってまだ留まったまんまの航生くんの指を締め付けてまう。
そのたびにそこからは新しい熱が生まれて、俺は体をピクン、ピクンて仰け反らせる事になった。
全身が剥き出しの性感帯にでもなってもうた感じで、航生くんがちょっと動いて足の先にツンて当たっただけでも中にキュンて力が入ってしまう。
指の存在を感じて体がまた仰け反り、今度はチンチンを押さえてる手の角度が変わってしもうてキュンてなって。
それこそイキっぱなし?
せえけどまだ満足してへん。
わけもわかれへんし体はしんどいのに、もっともっとの気持ちが止まれへん。
「航生くん...航生くん......」
俺を満足させられる唯一の人に...俺の止まれへん欲を止められるたった一人の人に助けを求める。
「慎吾さん、チューは?」
今チューなんかしてる場合やない。
また欲しいモンの手前でイッてまう。
俺は必死に...小さく首を振った。
「じゃあ、後でまたたくさんしましょうね」
航生くんの右手がゆっくりと動く。
もう今度は捩るような事はせえへん。
既に俺がイキっぱなしに近い状態で、これ以上になったら挿入の時まで体力もてへんのがわかってるから。
そーっとそーっと、できるだけ真っ直ぐに指を抜いてくれる。
せえけどやっぱり、その出ていく指に絡み付いた俺の粘膜が微かに引きずられるような感覚だけで、結局また一回イッてもうた。
......これはさすがにアカン...
今、このまま航生くんに入れられたら...満足する前に...気持ちが思いきり満たされる前に絶対飛ぶ。
「ちょっとだけ待っててくださいね」
枕元に伸びてきた航生くんの腕を思わず掴んだ。
力入れへんのに、体も思うように動けへんのに無我夢中で。
ズルズルって体起こして、航生くんが取ろうとしてた枕元の小さいボックスを先に開いた。
「慎吾さん?」
「俺、やるから...ていうかね、俺にさせて? あんな? 俺、今日はいつも以上に興奮してもうてるみたいで...ちょっとクールダウンせなこの後なんもできへんと思うねん。もう航生くんが欲しいて欲しいてどうにもなれへんねんけど、あんまり欲しすぎて...ほんまに体が言うこと聞けへん。せえからちょっとだけ...時間ちょーだい?」
こない航生くんが欲しいてしゃあない理由はわかってる。
ずっと我慢してたからとか風呂場で半端にイチャイチャしたからとか、そんなんちゃう。
航生くんの俺へのほんまに深い愛情を知ったから。
俺がずっと隠さなあかんて思ってた航生くんへの気持ちを口に出せたから。
もう航生くんに、なんの嘘も隠し事もなくなったから。
せっかくこんな気持ちの時に、体も心も満たされへんとかなったら、たぶん俺は自分が許されへん。
絶対後で後悔する。
「あんまり刺激的にしないでくださいね。俺もほんとはいつもよりちょっと興奮してるみたいで、実は...結構やばいんです。暴発なんてしたら困るでしょ?」
「そうなったら、喜んで一滴残らず啜ったるやん...航生くんのカルピス」
どうにかニッて笑って見せる。
体はまだ震えてるけど。
航生くんは俺のすぐ隣に座り、脚をちょっと開いて伸ばした。
自分でも言うてた通り航生くんの中心はパンパンに膨らんで、今にも臍につくんちゃうかってくらいギンギンに反り返ってる。
俺はノッソリノッソリ航生くんの脚の間へと移動すると、ボックスの中から抜いた小さな袋を口に咥えた。
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