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フィクションの中のノンフィクション【38】
手に取った小さい袋の端っこに、ギリッて犬歯を食い込ませる。
そのまま袋を引っ張れば、ちょっと呆気ないくらい簡単にビニールの切れ端が口許にぶら下がった。
その口に残ったビニールをプッとベッドの下に飛ばし、手に残った袋の方から薄いゴムを取り出す。
ピョコンて小さく膨らんだ精子溜まりをしっかり摘まんで空気を抜き、そこを舌で押さえながら口に咥えた。
ただ触って気持ちようしたげるだけやったら航生くんがさっきまで使うてたオイルを少しかけたいところやけど、今からピンクのお帽子被せなあかんからオイルもジェルもローションも使われへん。
なんぼ航生くんのんがビンビンでギンギンでテッカテカになってるっていうても、このまま下手に触ったら痛いんちゃうやろうか。
ゴム咥えたまんま止まったんで、さすがに航生くんも俺がなんか考えてるって気付いたらしい。
「もう俺、すっかりこんな状態ですから、そのまま被せてくれたら大丈夫ですよ?」
いっぺん咥えたゴムを手の中に戻し、わざとプーッと頬っぺたを膨らませて見せる。
「こんなに素敵なモンが目の前にあるのに、ゴム着けておしまいとかちょっと勿体ないもん。それに、俺のクールダウンの間にションボリしてもうたら嫌やん?」
「それはさすがにないと思いますよ? もう慎吾さんの中に入らないと収まりつかなそうですし。それとも、クールダウンするのにそんなに時間かかりそうですか? 俺がションボリするくらい?」
うーん...たぶん、そない時間はかかれへんと思う。
実際こうして航生くんにどっこも触れられてないからか、ゆっくり落ち着いていってるし。
ただ俺が触りたいだけ...大好きな航生くんの大好きなチンチンに。
俺に対してこんなに興奮してくれてる場所に、ただ触りたいだけ。
「もうちょっと時間かかんの! ええから、航生くんは大人しいしといて」
「フフッ...は~い、わかりました。お手柔らかにお願いしますね」
俺はゴムを咥え直し、更に中心へとにじり寄る。
そっと手を伸ばしてその先をチョンてつつくと、そこと俺の指先が透明な雫の糸で細く繋がった。
尚も溢れそうな雫を指に付け、真っ赤に膨らんだ亀ちゃん全体にそれを塗りつける。
ツルツルでパンパンのそれはほんまにイヤらしいて、俺の指が当たるたびにプルンて揺れるんが嬉しい
今はそれ以上溢れてきそうにない先走りは諦めて、そのまま軽うに竿を握った。
太い血管が浮かび上がってるのも、やっぱりイヤらしい。
そこをゆっくり上下に動かしながら航生くんを窺い見る。
後ろに手をついた航生くんは口許には笑みを浮かべながらも、その目は全然笑ってなかった。
あの綺麗できつい目で、射るように俺を見つめてる。
その鋭い視線を感じるだけで、せっかく落ち着いてきてた熱がまた全身に回り始める。
これはあかんて思って、ちょっと強めに手を動かした。
息を詰める気配にまたそっちに目を遣る。
航生くんの、あの大きいて美味しそうな喉仏が『ゴクン』て音を鳴らしながらゆったりと上下した。
少し目を細めた航生くんがペロッて唇を舐める。
唇が乾いただけなんやと思う。
たぶん...間違いない。
せえけど今の俺には、腹を空かせた猛獣が獲物を前に舌舐めずりしてるみたいに見えた。
もっと腹を減らせたい...貪るように、俺を骨の髄まで食らい尽くして欲しい。
感じさせて、我慢も余裕も全部取っ払って...俺だけをひたすら求めさせたい。
今一つヌメリの足りん手を、自分のチンチンへと持っていく。
さっきまでの余韻と新しく灯った欲の熱で、そこからは次から次に雫が溢れ出てた。
元々カウパーの量は多いと言われてた。
汁気の多い方がよりイヤらしく見えるんやって...だからこそお前にとってゲイビモデルは天職なんちゃうかってずっと言われてた。
せえけど、航生くんとエッチする時の量は撮影の時の比やない。
体だけやなく、心の奥まで全部が興奮してるってこういう事なんやろうなぁと思う。
その止まれへん先走りをたっぷりと自分の手のひらに乗せる。
「慎吾...さん...?」
俺のしようとしてる事がわかったんか、航生くんの声が震えた。
嫌がってるわけやないよな?
まあ、翌日に俺の撮影がある時は渋々でもいわゆる『兜合わせ』で終わらせる事もあるわけやし、この程度を今更嫌やとは思えへんやろ。
そしたら...興奮してる?
航生くんも興奮してる?
俺は自分のヌルヌルで濡れた手で航生くんの竿を強く握った。
さっきと違うて、ずっとスムーズに手が動く。
「...っ...はぁっ......」
堪えようとしてたらしい声が吐息と一緒に漏れてきた。
細うに開いて俺をじっと見てたはずの目は、今はしっかりと閉じられてる。
上を向いて唇を噛んでる航生くんがどうしようもないくらい綺麗で綺麗で、ちょっと泣きたなってきた。
手の動きをどんどん大きいする。
不意にその手が航生くんに止められた。
なんで?って首を小さく傾ける。
航生くんは大きく呼吸しながら、静かに目を開けた。
「慎吾さんは俺に入れられるまでイキたくないって言ってたのに、俺は慎吾さんの手コキでイカせるんですか?」
......あ、そうやった。
つい航生くんのエエ顔を見続けたくて夢中になってもうてた。
「俺だって、慎吾さんの中でイキたいんですよ?」
そんな静かやけど、どこか俺を戒めるような言葉に頷く。
ちょっとだけ距離を取ると正座をして、航生くんの股間へと顔を埋めた。
咥えたまんまやったコンドームをてっぺんに被せ、それを唇と舌を駆使して根元の方に向かって丁寧に伸ばしていく。
ゴムの感触越しであっても航生くんのをしゃぶってるって事に、背中をまたゾクゾクしたモンが走った。
このまましゃぶってたい気持ちを、中にぶち込んで欲しいって気持ちが大きく上回った。
「もうここまででいいですよ。慎吾さんも...我慢できないでしょ?」
俺が舌で伸ばした場所を手で押さえ、さらにそこからゴムを伸ばしてしっかりと根元まで覆いながら航生くんが熱い声で耳許で囁いた。
それには何も答えず、俺はコロンてベッドに転ぶ。
結局航生くんのを触って舐めてドキドキして...全然クールダウンの時間になんてなれへんかった。
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