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フィクションの中のノンフィクション【39】

航生くんに向かって足を開き、ねだるみたいに自分で膝の裏側を抱えた。 「早く...ぅ......」 せっかく落ち着きかけた体にまた火を着けたんは俺自身。 ほんまにもう、航生くんが欲しいて欲しいてしゃあない。 そもそも、少しは落ち着いてきたなんて思ったん自体が錯覚やったんかもしれん。 「ちょっとだけ待ってくださいね」 こんな時でもやっぱり航生くんは航生くん。 もうほんまにはち切れそうなくらいにギンギンになってんのに...... ひょっとしたら痛みを感じるくらいちゃうかってくらいに真っ赤になってんのに...... ゴムの上からたっぷりオイルをかけて自分のんをヌルヌルにすると、そのまままた俺のケツにも丁寧にオイルを塗り付けてきた。 さっきあんだけ解して感じさせてくれてんから、もう大丈夫なんはわかってるはず。 それでも、やっぱり俺の体が大事なんやと思う。 傷を付けたくない、少しでも痛みを感じさせたくないって。 ごく稀に見せる、自分の欲に飲み込まれてガツガツ俺を求めてくる航生くんも好きやし、たまにはあれくらい荒々しくてもええのになぁって考える事はある。 それでもやっぱりこんな風にもどかしいほど大切に大切にしてもらえると、ほんまに俺って愛されてるってめっちゃ幸せになれる。 「航生くん......」 「あ、もうちょっとだけ待ってくださいね。すぐですから」 「航生くん、ありがとう......」 たぶん、『焦らすな』とか『早くして』って言われると思うてたんやろう。 驚いた顔の航生くんが俺を見る。 「航生くん、ほんまにありがとね。俺を選んでくれて、俺をそばに置いてくれて、いっつも俺のわがままもニコニコ聞いてくれて...俺をこんなに幸せにしてくれて、ありがとう」 恥ずかしくないわけはない。 せえけどなんか...どうしても伝えたかった。 俺が航生くんといられてどんだけ幸せにしてもうてるんか、ちゃんと言葉にせなあかんて思った。 でもこうして言葉にしてみたら、なんでやろう...勝手に涙が出てくる。 「慎吾さん...泣いて...?」 「......あ、あれ~? なんでやろ...変やな...変やろ? あれ、ほんま、なんで...こんな股開いて涙流すとか、俺...むっちゃカッコ悪ない?」 フワッて笑った航生くんが、そっと俺に覆い被さってきた。 まだ止まれへん涙を舌で掬い、コツンてデコを合わせる。 「泣くの早いですって。これから俺ともっともっと幸せになって、もっともっと気持ち良くならないといけないでしょ? 泣くのはそれからじゃないんですか?」 「うん...うん...わかってる」 「それとも、もう幸せだから満足ですか?」 散々解されて、おまけにオイル追加されてヌルヌルのユルユルになってるであろう場所に、グニッって硬いモンが押し付けられた。 それはいとも簡単にニュッて入り口を広げる。 ほんの少し繋がっただけやのに、そこから一気に快感が背中を走った。 ......まあ、相変わらず涙は止まれへんけど。 今度の航生くんは、明らかに焦らすように少しだけ押し付けては腰を引き、またすぐにほんのちょっとだけ頭を押し付けるって動きを繰り返す。 まだ入れられてもいない粘膜の奥の方まで、じれったさに段々とムズムズし始めた。 「航生くんの...いけず......」 「そうですよ、意地悪してるんです。あのね、慎吾さん...『そばに置いてくれてありがとう』なんて、二度と言わないって約束してくれますか? 俺達はお互いの意思で一緒にいるんです。一緒にいてやるんでもないし、一緒にいさせてもらってるんでもない。俺達の間に上下関係があるわけじゃないでしょ? 二人が同じように大好きで、ずっと二人で歩いていきたいから一緒にいるんですよ。俺は慎吾さんをそばに置いてるつもりはありません。一緒にいたいだけです。俺の言いたい事、わかりますよね?」 ああ...前に勇輝くんが言ってたっけ...... つい自分を卑下したり、貶めるような言い方をしてしまう癖が抜けへんかった時期があるって。 そのたびにみっちゃんは優しく静かに怒ってたって。 航生くんもそうなんかな...俺も勇輝くんみたいに、つい自分を下に見てしまう癖があるんかな...うん、自覚はしてなかったけど、あるんかもしれん。 ずっと嘘ついて出会って、ほんまの事を隠し続けてるって負い目もあったし。 せえけど、航生くんが怒る気持ちもわかる。 俺が自分で『航生くんのそばにおらしてもうてる』なんて言い方したら、航生くんがこんなに大切に思ってくれてる気持ちを否定してるみたいやもんな。 俺が航生くんの気持ちを全然理解できてないみたいやもんな。 そんなわけないし、どんだけ航生くんが俺を大切にしてくれてるかなんて痛いくらいにわかってる。 けど航生くんからしたら俺がこんな言葉を無意識に使うたび、少しずつ傷ついてたんかもしれん。 「航生くん......」 「はい」 「俺をいつも大事にしてくれてありがとう。これからもずーーーっと大事にしてな? 俺もずーーーっと航生くんの事、大事にするから」 「それだけ?」 「えっと...今すぐ...航生くんので俺を一杯にして、最高に気持ちよく最高に幸せにして?」 「うん、合格です。てか、すごい今のグッときました。じゃあ今度はさっきまでのとは違う涙でグショグショにしたげますね」 「んもう...なんかオッサン臭い」 「そりゃあ、充彦さん仕込みですから」 「うわっ、みっちゃんの事オッサン扱いした。言いつけたろ」 クスクスと笑い合いながら軽く触れるだけのキスを交わす。 航生くんは改めて体を起こし、自分のチンチンの根元を軽く握った。 「どんな風にされたいですか?」 ズブズブとあの大きくてカチカチの亀頭をめり込ませながらニッと笑う。 指とはまるで比べ物にならない圧倒的な大きさに、正直俺は笑い返す余裕も無い。 頭だけを飲み込ませたまま航生くんは動きを止めた。 一瞬息を詰めてしまい乱れた俺の呼吸が整うんを待ってくれてるらしい。 意識して大きな呼吸を数度繰り返した俺に、航生くんは改めて尋ねる。 「今日は...どんな風にされたいですか?」 「ガツンて一発でトドメ刺されるくらい、激しいして。もうグショグショになって涙止まれへんくらい、めっちゃ幸せにして」 「りょーかいです。ベロ噛まないでくださいね」 航生くんの手が俺の足首を掴み、これ以上は無理ってくらいにそこを開いた。 そのままゆっくりと腰を進め、そしてゆっくりと引く。 それは単純に道を拓く為の動きのようでもあり、俺の欲を促す為の動きのようでもあった。 ゆったりとしたその動きでも航生くんの張り出した部分が確実に俺のイイ場所を刺激する。 俺のチンチンの先からは、ゴムパッキンの擦りきれた蛇口みたいにダラダラと先走りが滴り続けた。 俺の足首を握る力が強くなり、航生くんの口許がニヤリと笑った形に歪む。 あ...来る...... ギリギリで気付いて微かに身構えた瞬間『ドンッ』と全身がずり上がる程の衝撃が訪れ、わけもわからないままで意識が朦朧とする。 チンチンの先からは透明な蜜の代わりに白い雫をドロドロと溢れていた。

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