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【SS】全部、好き。

創作BLワンライ・ワンドロ!参加 お題「開けてくれ!!」 23分 おおっぴらには出してませんが(出ないようにしていますが)、アヤ視点の話です。 ーーーーーーーーーーーーーーーー お腹空いた。 ご飯、今日ももらえないかも。 寒いし暗いし、一人は嫌だ。 ドアの向こうにあの人がいるのはわかってる。 だけどあのドアが開かないことも知っている。 あの人があのドアを開けてくれるまで、ここで静かにしてなきゃいけない。 優しさなんか望まないから、名前を呼んで。 あったかい手料理やご馳走なんて望まないから、何かお腹を満たすものをください。 早く、そのドアをーー 「開けてくれー」 えっ? なんともシンクロしつつも間抜けなその声に、我にかえる。 「この瓶の蓋、すっごい硬くて。開けて?」 えへへと擦り寄ってくるのは、最愛の人。 いつも手のかかる、おっちょこちょいで騒がしいこの男。実際今も瓶の蓋を開けろだなんてくだらない用で起こしに来る始末だ。 頭がぼーっとする。ああ、昔の夢を見ていたのか。 「また、あの夢?」 「…ん」 コクンと頷くと、肩を抱いて髪を撫でてくれた。 「もう大丈夫、どこへだって行けるし、好きなものお腹いっぱい食べられる。それに、もう一人じゃないでしょ」 ほっとけない、世話の焼ける奴だと思っているのに、結局のところこうして包まれてしまえば勝てやしない。守られているのは、俺の方なのかもしれない。 「そうだな」 抱き返すと目を細める。その表情が好きだ。 「だから、ね?これ開けて」 まだ言ってるのか。受け取って力を込めると、ポンと言う音とともにいとも簡単に蓋は開いた。 「こんなの自分で開けられたでしょ」 呆れ顔で言ってやると、バレたか、という顔になった。悪戯っぽく笑う、その顔も好き。 顔だけじゃない、その声が、その手が、その体温が、今の俺を俺でいさせてくれてる。 なかなか上手に伝えられないけど、本当はきっと俺のほうが、愛してる。 【おわり】

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