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【SS】待ち合わせ
いつものように、かなり早めに家を出た。いつも早く着くのは、待たせたくないし、いてもたってもいられないからだ。待つのは嫌いじゃない、いや、好きだ。どんな服を着てくるのか、第一声はなんて話しかけてくれるのか、髪を切ったことに気がついてくれるだろうか。これから会える大好きな相手のことをあれこれ考えながら待つのは楽しく、心躍る。
また三十分ほど早く着いてしまった。さすがに早すぎか、と内心苦笑しながら、さて何をして待とうかと少し考える。駅前の本屋で時間を潰している、とメッセージを送り、ソファに腰掛けて読書ができる書店へ。
といっても、別段熱心な読書家というわけでもない。結局、地域の観光やグルメなどを特集したタウン情報誌を手に取り、パラパラとページを繰る。地元でもないこんなところの情報誌を見ても、何の役にも立たないのに。──連れていってくれるわけでもないのに。
結局占いのページを一番真剣に見入っていたら
「ひとり?」
と頭上から声がした。
突然のことに驚いて顔を上げると、
「デートしない?」
とさらに声をかけられた。
意外な声の主に思わず吹き出すと、向こうも可笑しそうに笑った。
にわかに輝いた瞳の中には、待ち合わせの相手である最愛の人が目を細めている。情報誌に載っていた気になる観光スポット、連れていってくれるかな……?
「する!」
顔いっぱいに嬉しさを散りばめ、勢いよくソファから立ち上がった。
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