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そんなこんなのおいしいはなし 3

「美味そうな、ってどういう」  アヤは訳が分からない。豚饅を取られて怒っているというわけでもなさそうだ。 「もう、さっきから美味そすぎんねん!なんなんもう、狙ってんの?」 「ちょっと待って、意味がわからない」 「わからんでええわ」  てかてかとグロスを塗ったように艷めくアヤの唇の脂を、リョウの唇が舐めとるように吸い付く。 「何か怒っ、ん」  さらに咥内へ舌を進めると、豚饅の肉肉しい余韻を味わった。  さんざん咥内を喰らい尽くして唇を離せば、今度はアヤの指を咥えこんで、舐め回すかと思えば弱く吸い、また舐め取るように舌を這わせる。 「アヤおいし」  今度はリョウが満足そうに舌なめずりした。 「何言ってんの気持ち悪い……」  口では悪態をつくアヤだが、それまでの無機質で冷ややかな表情から一転、すっかり切なげな瞳で熱い息を零している。そんな様子を見てリョウはふふっと笑い 「次はどこ食べよっかな」  アヤの真っ白なワイシャツのボタンを外し始める。リョウが次に何をしようとしているかわかったアヤは、その手を止めた。 「だめ」 「何が?」 「だから……」  アヤが言い淀んでいると、リョウはアヤが押さえていた手を振りほどいた。そして再びボタンを外し始め、インナーをたくし上げた。 「だめだって」 「だから何がって」 「……」  この後きっと、アヤの弱い所を舌やなんやで弄んでくるつもりなんだろう、と予想している。だが予想していることを悟られるのも、期待しているみたいで、自分から言い出すのは恥ずかしい。  リョウは依然にこにこと穏やかな笑顔のまま、やはりアヤの予想通り、めくったインナーの中から現れた小さな尖りを舌でつついた。 「っ、それがだめだって」 「それってー?」  リョウは尖りの変化を楽しむようにつんつんと舌先でつついていたが、じゅうぶんに立ち上がったのを見届けると乳輪ごと口に含んで円を描くように舐めあげた。 「シャワー、まだ、で、きたな、っ!」  アヤの体が跳ねた。一日働いた後、シャワーも浴びていないのに汚いから、と抗議したかったらしい。 「何をしおらしいこと言うてんの、アヤらしくもない」  ようやく顔を上げたリョウもまた、唇が唾液まみれでてらてらと光っているし、ニヤリと笑うそれはさっきまでの穏やかな笑みとは別物だ。アヤも思わずゾクゾクしてしまう。 「リョウ……」 「好きにしていい?」  リョウの顔から笑いは消えていた。懇願しているようでいて拒ませない、そんな空気が二人の間を流れる。 「じゃあ、シャワー」  起き上がろうとしたところをまた押し倒され、両手首を掴まれる。 「だ・め」  普段は三枚目路線、どこか抜けてていつも騒がしくて、甘えん坊で寂しがり屋。アヤはリョウのことをそんなふうに思っている。だがこうやって抱く時ばかりは、優しさの中に荒々しい一面が垣間見えて――そんなところにアヤはひどく興奮するのだった。

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