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限界ラバーズ 4
「……もう限界かも」
アヤの気だるい声に、リョウは心臓を鷲掴みにされた。
「え、げ、限界、って、まさか、」
不安になっているところへ不穏な言葉を聞かされ、胸が軋んで生きた心地がしない。だが続くアヤの言葉は、予想と正反対のものだった。
「毎週来たら」
「え」
「俺は自分の休みの日に休めるから、リョウさえ来たかったら毎週末来たら」
「アヤ……?」
「交通費半分持つし」
思考が追いつかずぼーっとしているリョウに、アヤがようやく向き直った。
「ほっといたらろくなこと考えないだろ」
「あ……」
「連絡なしに来ない週があったら、リョウに何かあったと思っとくよ」
「うん……」
まだ呆けた様子のリョウに、アヤが少し困ったように首を傾げた。
「こんなのじゃ、だめ?」
リョウは我に返り、慌てて首を小刻みに振った。
「だめやない、全然っ」
そこでふたりはやっと、微笑みを交わした。
「嬉しい、めっちゃ嬉しい」
辛そうなわけでも無理をしているわけでもない、蕩けるような本当の笑顔を目にして、アヤもじんわりと胸が温まる。
やっぱり、この顔が一番好きだな。と、愛おしい気持ちが一層強くなる。
「キスしても?」
アヤがお伺いを立てると、返事の代わりに、リョウの方から、啄むようなキスをしてきた。
「そんなのじゃなくて」
半身だけ起こすと、アヤはリョウに覆いかぶさり、咥内を喰らいつくさんばかりの獰猛なキスを何度も何度も繰り返した。
「あ……アヤぁ……」
「どうしたの、また欲しくなった?」
「ちが、その……土日は友達と遊ぶこともけっこうあるから、毎週っていうわけには……」
それまで取り巻いていたねっとりとした熱は急激に冷え、アヤは急に真顔になって唇を離した。
「来られなくなった時はなるべく早めに連絡入れて」
「無断欠勤して副支配人に注意されてるみたい。そういや長いことお仕事モードのアヤ見てへんなぁ」
ふふっとリョウが微笑うと
「そういうプレイ、してみる?」
アヤも口端を上げた。
【おわり】
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