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眼鏡と意地とプライドと
創作BLワンライワンドロ
お題【眼鏡】
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アヤは外では決して眼鏡を外さない。
コンタクトレンズは生まれてこの方使ったことがないし、使うつもりもないそうだ。
だからおそらく、外した顔を知っている者はそう多くない。昔はさておき、現時点では恋人のリョウだけだろうし、リョウもそうだったらいいなあと思っている。
なぜなら、ひとたび眼鏡を外せば、なんとなく間延びしたように見えてしまう顔はもちろんのこと、行動までドジで隙だらけになってしまうから。そんなアヤを他の誰にも見せたくない、とリョウが思うのは、恋人なら当然だ。
視力が相当悪いせいで、何かを取ろうとしても見当違いのものと取り違えたり、空振りしてみたり。普段がローテンションで無口で、おどけたりふざけたりするキャラではないだけに、本人には悪いがリョウにとっては可笑しくて、可愛くて仕方がない。そしてそのたびに、代わりにあれこれと世話を焼いてやるのが喜びでもある。
そんな視力だから、リョウといる時だってほぼずっと眼鏡はかけっぱなし。外すのは入浴時と就寝時のみ。キスする時も、交わる時も、ごくたまにしか外すことがない。深々と、幾度となく角度を変え舌を絡めながらくちづけていても、繋がって激しく身体を揺さぶられていてもだ。互いに邪魔だと、リョウは何度となく眼鏡を外すよう促してみたが、アヤは頑として外さない。
理由は想像に易い単純なもので、リョウのトロトロになった顔やその他の部分を見たいから。
それともうひとつ。こんな場面でまでミスをやらかして、可愛いだなんて思われてなるものか、という一応年上でもあるアヤのちっぽけな意地とプライド。こっちの理由は絶対リョウには話さない、とアヤは心に決めている。
だから例えレンズが曇ろうが、振動でカチャカチャ鳴って何度もずり落ちようが、そのたびブリッジを中指で上げては、今夜もリョウの奥を穿つ。
「アヤ、アヤ」
うわ言のようにリョウが呼ぶ。絶頂が近いのか、とアヤが顔を寄せる。
「そうやって眼鏡気にしながらするのも、すごい一生懸命ぽくて可愛いよな」
これ以上ないという幸せそうな笑みを湛え、リョウが言った。
その夜以降、アヤは行為の際眼鏡を外すようになった。
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