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彼の弱いところ 2
「アヤ! 朝やで起きて! 買い物行こ!」
まだ眠っている傍からキャンキャンとうるさい声が頭に響く。夜中に勝手に欲情して、その欲をさんざん撒き散らかしておいて、どうしてこんなに元気なんだ。撒き散らかされた方のアヤは不思議でならないし、目も開かなければ体も動かない。
「……買い物って、何を」
「部屋着!」
「今着てるのあるからいらない」
「こんなくったびれたんばっかりでよう言うわ! 恥ずかしないん? 夏モンかて白Tの生地うっすなって乳首透けてたやろ」
「誰も見ない」
「俺が見てるやろ。こんな首ビロンビロンのん着てるから、あんな……」
「あっそ」
「こんなん着てたら、また襲うで」
一時間後、二人は近くのショッピングモールにいた。メンズ、レディース、キッズと家族全員のものが揃うファストファッションブランドのショップで、ああでもないこうでもないと部屋着を選んでいる。といっても、ああでもないこうでもない言っているのはほぼリョウ一人で、アヤはつまらなそうに眺めている。
「なあなあ、これイロチにせえへん? アヤが黒で俺が白とかどう?」
二着のルームウェアを手にしたリョウが、嬉々として訊いてくる。
「いいんじゃない」
明らかに、語頭に『どうでも』が省略されている口ぶりだが、リョウはそんなこと気づいていないのか慣れたものなのか、お構い無しだ。
「あー、でも白は汚れ目立つかなあ」
「どうせ汚れも白だろ」
アヤの言葉にリョウはしばしきょとんとしていたが、意味がわかると
「やっらし! えっろ!」
両手を振り回してわあわあ言っているが、アヤは
「さっさと帰りたい。もう疲れたんだけど」
帰ったら、覚えてろよ――
頭の中は、夜中騙し討ちのように好き勝手されたことへのリベンジでいっぱいのようだ。
【おわり】
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