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二人の弱いとこ(2)
「アヤ。腹減った」
憮然たる声に起こされたのはまだ日が昇りきらない早朝。
「……?」
「なんか食わしてよ」
いつもなら先に勝手に何か食べているのに、どうしたのだろう、とアヤは疑問に思う。
「冷蔵庫の、何でも好きなの食べていいよ」
「だから持ってきてえな」
「そんなの自分で……」
「腰 立 た ん の や !」
歯を食いしばりながらリョウが恨めしそうに睨んで言う。
「ついでに言うたら腹筋筋肉痛すぎて動かれへん」
アヤは何も反論できず、すごすごと冷蔵庫へ向かい、昨夜買っておいたヨーグルトやサンドイッチを出してきてリョウに渡した。
「食べさして」
「そのぐらい自分で……」
「んもーーーどっこも動かされへんのーーー!」
わあわあと叫びながら最後はちゃっかりお口あーんで食べ物が入ってくるのを待つ。まるで鳥の雛のように。
「……承知いたしました」
ため息を吐いてアヤがスプーンでヨーグルトをすくい、リョウの口に入れた。
その日は一日、アヤはリョウの召し使いよろしくこき使われたわけだが、実は互いに内心それほど嫌でもなく、こんなのもたまには楽しいかも、なんて思っていたのは双方内緒の話。
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