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川遊び
『真尋、真尋、もうすぐ駅だよ』
「んぅ……」と目をこする。
いつの間に寝てたらしい。何だか勿体ない気分になった。
シンとこうやって会えるのは、まとまった休みがある夏と冬くらいだからだ。
『ごめん。寝ちゃってた……』
『構わないよ。それより「シン、触っちゃだめ」って寝言言ってたけど、一体どんな夢を見てたの?』
俺の言葉を日本語で話しながら、クスクスと笑うシン。
そうだ。俺、シンとエッチしちゃう夢を見ちゃったんだった……。
久々のエッチ……夜、するかな。
『期待してる目をしてる……私は、昼からでも構わないよ?』
覗き込んできたヘーゼルの瞳は熱っぽくて、何だかやらしい。
『ダメだよっ、昼は魚釣って食べる予定だから……っ』
『そう、それはそれで楽しそうだ』
シンは耳元に口を寄せて、『お楽しみは夜まで取っておこう』と言われ、股間が少し熱くなった。
駅に着くと、迎えのマイクロバスが来ていた。
他にもそのコテージに行く人達がいるみたいで、何人か乗っていた。
その中に女の子三人組がいて、シンを見てキャーキャー騒いでた。
(なんかムカつく……)
俺のシンなのに。
ついムスッとしていると、隣でコソッとシンが俺と指を絡ませながら手を握ってくれた。
恋人繋ぎとか言うやつだ。
嬉しい。
一喜一憂ばかりして、恋って忙しいな。
コテージに着くと、支配人みたいなおじさんが挨拶に来てくれた。
シンを見て、少しビビってたけど、シンが気をつかって「日本語も話せますよ」って声をかけると安心したようだった。
「山岡様のコテージは10番です。こちらが鍵です。川へ釣りに行かれる時は、釣竿をお貸ししますので、事務所に声をかけてください」
「ありがとうございます」
「ここでは何が釣れるのかな?」
シンが聞くと、支配人は「イワナが特にたくさん釣れますよ」と答えてくれた。
荷物を置いて、早速釣竿を借りた。
川辺はやっぱり涼しい。
早速餌を付けて、釣ってみる。
…………なかなか、釣れない。
『シン……ここ全然、釣れないよ』と、シンの方を見ると、既に二匹もバケツの中にいた。
『えー!?何でもう二匹も釣ってるの!?』
『ん?場所かなぁ?変わろうか?』
シンに場所を変わってもらっても、結果は一緒。
何で釣れないんだろ?
『シン……俺、センス無いのかも……』
『おいで。一緒に釣ろう』
組み立て式の大きめの椅子にシンが座り、彼の膝の上に座って釣りをしてみる。
うう、なんか恥ずかしい……。
周りに人がいないのが、救い。
『魚は警戒心が強いから、人がいるのが分かるとすぐ逃げるんだよ。影が映ってても分かるんだ』
しばらく静かに釣り糸を垂らしていると、釣竿がピクリと反応する。
『すぐ引っ張らずに、もう少し焦らして……そう、今だ!引いて!』
シンの言葉を合図に引いたら、見事に魚が釣れた。
二つのバケツには魚が合わせて八匹泳いでいたけど、シンは自分のバケツの魚を逃がしてしまった。
『逃がしちゃうの?』
『食べられる分だけにしておこう。とり過ぎは良くないからね』
コテージの近くにあるバーベキュー広場で魚を串にさして焼いてみた。
『美味しい!』
『新鮮な魚は美味しいな』
二人で魚を食べていると、マイクロバスで騒いでいた女の子三人組が近寄ってきた。
「あのぉ……すみませーん。良かったら、私達とバーベキューしませんかぁ?」
そう言って、まず俺に話しかけてきた。
……多分、シンが外国人だから、俺を通訳にしようとしてるんだ。
目的は絶対にシンだ。
「申し訳ないけど、俺たち二人で楽しんでるから……」
「バーベキューは大勢の方が絶対楽しいですって!」
もう一人の女の子が俺の腕を取った。
しつこいなぁ!
困った……このままじゃ、せっかく二人だけで来た意味がないよ……。
すると、シンは俺の腕から女の子を引き離した。
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