7 / 9
予定は山積み
どれくらい時間が経ったんだろう。
外はすっかり真っ暗だ。
隣を見ると、シンがいた。
長い指で、俺の髪をいじっている。
「シン……起きてたの?」
「うん。真尋を見てた」
「ふふ……何それ。もう、すっかり夜だね」
「そうだな」
俺は窓の外を見た。
寝室の窓からは星空が見える。
広いテラスみたいなベランダもあって、外に出られるらしい。
「あーあ……一日目終わっちゃったな」
「ん?」
「この調子だと、三泊四日なんてあっという間だよ……」
泊まりの旅行は始める前は楽しみで楽しみで仕方なかったし、始まってからもすごく楽しいけど、これが永遠に続くものじゃなくて、終わりがあることってことを考えてしまう。
「もう旅行の終わりのことを考えてるのか?」
「考えちゃうよ……あと三日したら、シンは講演会に行って、それからイギリスに帰っちゃうでしょ?」
「……じゃあ、感傷に浸っている真尋に旅行の最終日にプレゼントをあげよう」
「あ、そうだ!プレゼントって何?俺、何にも用意してないよ?」
「私にとっては、この旅行がプレゼントだ。私からのプレゼントは最終日のお楽しみだ」
「お楽しみかぁ……なんか、最終日が待ち遠しくなってきた」
本当にシンは俺を楽しみにさせたり、喜ばせたりするのが上手い。
さっきまで、沈んでいた気持ちがワクワクに変わった。
「明日は何するんだ?……一日コテージでゆっくりする?」
俺の髪を撫でるシンの声が色っぽくなる。
けど、俺は甘い雰囲気になるのを「待って!」と止めた。
「明日は、やることがたくさんあるから!」
俺は部屋に置いてあったカバンから手帳を取り出す。
そこには、旅行の計画が書いてあるんだ。
「これは?」
「明日は、山登りをして、山頂近くにある温泉に入りに行きます!それから、お昼はその近くのレストランでご飯食べて、夕ご飯はカレーを作って、夜は花火する予定だから!!」
「……すごい。予定がびっしりだね……」
シンは少し呆気に取られてるみたい。
俺、はしゃぎ過ぎ?
「……シンは、やっぱりゆっくりしたい?」
「いや、最近体がなまってたから、ちょうどいい。それに日本の温泉にも久々に浸かりたかった。真尋プロデュースの旅行なんだ。楽しまないとね」
「うん!」
シンとの思い出、いっぱい作りたい。
明日も楽しみだな。
ともだちにシェアしよう!