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星を捕まえて
山登りや温泉、それから渓流登りも楽しんで、夜は星空を見て色々話して、それからそのままシンとエッチをする。
そんな楽しい時間をずっと過ごしていたいと思うのに、時間というのは本当にあっという間で、今日でこのコテージに泊まるのが最後になる。
たんまり買った花火ももう今日で最後で、線香花火に火をつけた。
「線香花火って……どうして一番最後にしたくなるんだろ……」
「うーん……落とさなければ、一番長くて綺麗な花火だからじゃないか?この火の玉を見てたら、何だか楽しい思い出を思い出したくなる」
確かにそれは一理あるかも。
この物寂しい感じが、そうさせるのかもしれない。
ぽとりと火の玉が落ちた。
花火の始末をして、コテージに入り、ベランダに出た。
空から星がこぼれ落ちそうなほどの満天の星空。
明日には、シンは日本を離れちゃうんだよな……。
そう思うと、ポロリと涙が出てしまった。
また会えない日々が来るのか思うと、やっぱり辛い。
「真尋、あんまり外にいると冷えるよ……って、泣いてるのか?」
「シン……」
俺はぎゅっとシンに抱きついた。
この旅行で何度、シンに抱きついただろう。
何回、キスをしただろう。
どれだけしても、やっぱり恋しくなって、別れが辛くなる。
こんなに甘えてばかりいると、いつか愛想を尽かされるかも。
「泣き虫だな……真尋は」
「だって……好きなんだもん。シンの事が……」
本当に好きなんだもん。
離れてしまうことが分かってるから、余計に今甘えたいんだ。
「仕方ないな。泣き虫の真尋に、星を取ってあげよう」
「え?」
シンは、左手を宙にかざして、ぎゅっと何かを掴む動作をした。
空の星を捕まえるように。
「ほら、捕まえた。見てごらん」
握りこぶしを少しだけ開き、俺はその指の隙間を覗く。
すると、キラリと何かが光った。
シンの顔と手を何度も交互に見てしまった。
もう一度、目を凝らして見てみる。
「これ、もしかして指輪……?」
「当たり」
手を開くと、そこにはキラリと光る指輪があった。
特に飾り気のないシンプルなシルバーの指輪で、ダイヤが埋め込まれている。
シンは俺の左手を取って、薬指に嵌めた。
「これは、私の分だ。君が私につけて」
一回り大きめサイズで、同じデザインの指輪。
俺は少しだけ震えながら、シンの左手の薬指に嵌めた。
同じ指輪がお互いの同じ指に光っている。
「山岡真尋くん。私は君を永遠に愛し続けると誓います。……君は?」
「お、俺も……誓います」
「これが私からのプレゼントだ」
「シン……っ、俺、ヤバいかも……嬉しすぎて、死んじゃうかも……!」
涙腺が決壊して、涙止まんないよ……。
「君はすぐに死にそうになるんだな。生きていてくれなきゃ困る」
抱き寄せられ、頭の上でシンの笑い声が聞こえた。
幸せ過ぎるんだから、仕方ないじゃん。
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