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第5話
翌朝──。
ジリリと目覚ましが鳴る。
うざったい音だと、幸太郎もナオも思うのだが、どちらかがこれを止めなければずっと鳴り続ける。
先に痺れを切らしたのはナオだった。
朝にはめっぽう弱いが、自分が動かなければ幸太郎が会社に遅刻してしまう。
そんな幸太郎は目覚ましの音くらいでは起きないほど、深い眠りに就いているように見えた。
こうして見ると、本当に幸太郎の顔立ちは美麗だなと思う。
ベビーフェイスのナオが、幸太郎を独り占めしていていいのかとも思う。
「幸太郎、起きて……朝だよ……」
彼の肩に手をかけてゆさゆさと揺さぶってみれば、彼は長い睫毛に縁取られた瞼をゆっくりと押し上げた。
「……はよ」
「おはよ……って、うわっ!?」
挨拶を交わしたと思えば、すぐさま手首を掴まれ抱き締められる。
「幸太郎、朝!支度しないと遅刻するって!」
「わーってるよ……でも、たまにサボりたくなる……」
「仕事、休んでも平気なの?」
幸太郎の気持ちは痛いほどによく分かる。
ナオも「何となく仕事に行きたくない」と感じることがあるからだ。
「いや、休めねーな……」
「じゃあ、起きないと」
幸太郎はナオの瞳を覗き込み、唇を弓なりにしながらチュッとキスを落とすと、ようやくベッドから出たのだった。
朝食は基本洋食だ。
トースト、スクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコン、野菜サラダ。
これらの準備をするのは専らナオだが、幸太郎ほど多忙な仕事に就いている訳ではないので、余裕で作ってやれる。
「あ、そう言えば……」
ナオは幸太郎の前に淹れたてのコーヒーが注がれたマグカップを置くと、寝室へと戻って行く。
そして小包を手にダイニングに戻って来た。
「これ、昨日幸太郎宛に届いてたよ。通販で買い物でもした?」
幸太郎は内心ドキッとした。
そう言えば、数日前の昼休み、スマホで見つけた商品を買っていたのだったと思い出したからだ。
「あー、ちょっとな……」
「何買ったの?」
「そのうち教えてやるって。とりあえず、いただきます!」
幸太郎は元気に手を合わせると、ナオの手作り朝食を片っ端から平らげていく。
ナオもつられて食事を摂る。
こういうの、幸せだなぁ──。
目の前に好きな人がいて、ナオを好きだと言ってくれて、帰宅すると風呂や食事よりもナオを欲しがってくれる。
この幸せがなくなってしまったら、なんて考えたくない。
だから早く幸太郎をゲイの世界へ誘い込んだことについて、割り切ってしまいたいと思っていた。
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