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第23話
ここ数日、幸太郎の様子がおかしい。
ナオは少々暇な時間を持て余しながら、幸太郎がどうしておかしいのかについて考えてみる。
普段と異なることがあっただろうか──。
そういうことなら、山ほどあるように思う。
まず何かを隠したがっているようで、幸太郎用のクローゼットの奥深くに何かをしまっていた。
ナオとしては何をしまったのかが気になるのだが、あまりプライベートなことに立ち入るのも憚られ、そっとしておいている。
そうだ、その隠しものを持ち帰ってから、なんとなく幸太郎の態度がぎくしゃくし始めたような気がする。
朝の「行ってきます」のキスはしてくれる。
だが帰ってから「風呂よりメシよりナオがいい」といつも押し倒してくるのに、それがなくなった。
最近「風呂よりメシよりクローゼット」という感じで、ナオの目を盗んで何かをしているような気配を感じている。
「あのクローゼットの中に、何かあるのかな……?」
いっそ覗いてしまおうか。
それはだめだと分かっていても、少しも求められなくなったのだから、ナオとしてはその理由くらい知っておきたい。
その上で納得すれば今のまま様子を見るし、そうでなければ幸太郎に直接事情を訊けばいい。
「よし、決めた!」
ナオは6時少し過ぎに帰宅すると、まずクローゼットのある部屋の電気を点け、幸太郎のクローゼットを開けた。
そしてしゃがみ込んで奥の方へと手を伸ばす。
「ん……何かある……?」
カサカサと音がするということは、紙袋だろうか。
ナオはそれをズルズルと滑らせて手元に引き寄せると、中に入っていた分厚い冊子を取り出し、カバーをめくって硬直した。
「女の人……?これって、まさかお見合い写真……?」
ああ、これはだめなやつだ──。
見てはいけないものを目にしてしまい、心の動揺を上手く隠せる自信がない。
「そっか……やっぱり、俺は二番目になるんだ……」
視界が涙で曇る。
いつかこんな日が来るんじゃないかと覚悟して、「好き」とも「愛してる」とも言わなくて正解だった。
「覚悟はできてたはずなのに……なんでこんなに胸が痛いんだよ……」
本気で好きになってしまったから、苦しいのだと分かっている。
分かっていても、言葉にせずにはいられない。
幸太郎にはこの写真を発見したことを謝り、お見合いについてどうするつもりなのかを訊こうと思った。
もし結婚に前向きなら、ナオの存在は邪魔でしかなくなる。
そんな存在に成り果てるのは、心から嫌だと思った。
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