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第25話
その夜、幸太郎も結局食欲がわかず、冷蔵庫内に残っていたヨーグルトだけを口にして、ナオに添い寝をした。
見合いは明後日の午後一時から。
それまで、どこにも行かないでくれと、祈るような気持ちでナオの髪をさする。
俺は……幸太郎以外の人、好きになれるかな。幸太郎が俺の初恋だから──。
そうだったのかと、幸太郎は初めてナオの恋愛事情を知った。
だが生憎幸太郎以外の誰かを好きになってもらっては困る。
幸太郎だって、ナオを愛しているからこそ、こうして一緒に住んでいるのだ。
ナオが落ち込んでいる時は、幸太郎もしんみりしてしまう。
特に今回のように、あからさまな原因が幸太郎にある場合は、自分で自分がもどかしくてたまらない。
たかが庶務課の腰掛社員の気紛れで、ナオとの関係にヒビが入ったりしたら、幸太郎だって立ち直れる自信がない。
「ゴメンな……ナオ……」
ナオは少し面やつれしただろうか。
媚薬の件からずっと迷惑をかけっぱなしだから、幸太郎に振り回されて疲れているのかもしれない。
この見合いの件が片付いたら、休暇をとってどこかへ遠出してみようか。
そう言えば、幸太郎はナオと付き合い始めてから、旅行にすら行っていないことに気付いた。
「旅行会社のサイトでもチェックしてみっか」
ナオがすやすや寝息を立てていることを確認すると、幸太郎は寝室を出て隣の部屋に移動し、机の上に置かれたデスクトップパソコンを起動させた。
ちなみにナオのパソコンはラップトップで、机の抽斗の中に入れてある。
2人共互いのパソコンのパスワードは教え合っていないので、相手のパソコンを閲覧しようにもできないようになっていた。
「まずは国内か海外か……」
こうして探してみると、どこへ行ったらいいのか真剣に悩んでしまう。
国内でも海外でも値段は大して変わらないことを知った。
まあ幸太郎の場合はパスポートがないから、とりあえず海外は却下する。
「あとはどんだけ有給休暇をもぎ取れるか……1週間はイケるか……?」
「幸太郎、新婚旅行の行き先探し?」
「──っ!?」
気付けばナオがパジャマ姿のまま入り口に立っていた。
なぜ気配に気づかなかったのかと、幸太郎は自分を責める。
「どこ行くの?っていうか、あの写真の人、家事手伝いとかしてる人?」
さあ、どうする──?
ピンチはピンチだが、幸太郎次第で切り抜けられるかもしれない。
ただし、ナオが幸太郎の目論見通りのリアクションをしてくれればの話ではあるが。
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