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第31話

ホテルで食事をしてからの帰り道、幸太郎は再度ナオにどこへ行くつもりだったのかを問うてみた。 手を繋ぎながら、ごく自然に。 「どこかのホテルに泊まって、その間に家を探して……見つかったら引っ越そうかなって」 「お前はそれで納得できたのかよ、ナオ?」 「そんなワケないよね……」 ナオは「幸太郎を取らないで」と夏美に訴えている。 だから幸太郎のいない生活なんて考えられないし、できるはずもなかった。 手を繋いで帰路を辿りながら、ナオは考える。 幸太郎は「好き」とか「愛してる」という言葉を常にくれているのに対し、ナオは全く返していない。 「幸太郎……一つ聞かせてくれる?」 「あ?何だよ?」 「ゲイになったこと……どう思ってる……?」 ずっとこのことを訊くのが怖かった。 元々ノーマルだった幸太郎をゲイの道に引きずり込んだのがナオだという自覚があるだけに、いつかまたノーマルの世界に戻ってしまうのではないかと、常に心のどこかで怯えていた。 「どうって、別に……それに、俺は生粋のゲイじゃねーよ」 「え……?」 「ナオ限定のゲイだ。お前を好きになったことを後悔したりはしねーし、これからもする気はねー。お前はどうなんだよ?」 「お、俺は元々ゲイだから……」 時折、ナオは幸太郎が眩しいと思うことがある。 今もそうだ。 自分が「これだ」と信じた道を真っ直ぐに歩き、その信念に悔いはないと言い切れる姿が、とんでもなく眩い。 そんなナオは、もしかしたら油断していたのかもしれない。 幸太郎が愛の言葉をくれることで、自分が彼の一番なんだと理解できた。 だが今回の見合い騒動で、「二番目になってしまうかもしれない」という恐怖に苛まれた。 二番目でよかったはずなのに、いつの間にか一番が不動の地位だと思い込み、結果ああだこうだと理由をつけては幸太郎の告白に応じることなく、今日まで過ごしてきてしまった。 「元々ゲイだから、幸太郎をこっちの世界へ引きずり込んだっていう負い目が、ずっとあった」 「くだらねーな」 「くだらなくないよ……だって幸太郎の未来に関わることなんだし。でも、お見合いの場で俺は『幸太郎を取らないでください』って言った……お見合いの邪魔をした……これって許されることなの?」 まあ世間一般の常識で考えれば、決して褒められた行為ではないだろう。 諸住翔がどうしてナオの同席を許してくれたのかについては、幸太郎も謎に思っており、明日出社したら聞いてみることにしよう。

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