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第3話

二人が仕事をしていることが心の奥では羨ましく思っている。ふて寝のように布団に入れば数秒で眠りに誘われた。目が醒めると朝になっていて一瞬うたた寝をしていたような目覚めの感覚に、なんだか損をした気分だと名残惜しいベッドを横目にのそのそと這い出た。 また今日も長い一日が始まる。廊下を渡りリビングに行けば、夜の顔はどこに行ったのか、さわやかなイケメンが揃って「おはよう」と笑みを見せる。 二人は寝ていない。朝方まで仕事をし毎朝こうやって疲れを見せず孝司と直は圭一と一緒に朝食を摂る。家族団欒の夕飯ではなく家族団欒の朝食。堤家の日常だ。 「おはよ」といつもと同じ無愛想な顔を見せ洗面所に向かう。新聞を広げた孝司に食事の準備をする直。甲斐甲斐しい直を見ていると、いつだったかこの人は受け入れる方なんだろうと二人の仲を考えたことを思い出した。 愛されオーラとでも言うんだろうか。二人の図柄から孝司が受け入れているなんて考えたくなくてどうしても直を受け入れる側だと、そうだと思いたかったのかもしれない。 圭一はそんなことを真剣に考えた学生時代を急に思い出して何故だか笑いがこみ上げた。 二人が抱き合ってセックスしている。見たことも聞いたこともないが、男同士でどうやって愛し合うんだろうと、真剣に検索したあの日を思い出す。 自分の前ではキスもしない二人で妄想し、事実を知った後、それはやっぱ好きじゃないとできない行為だって納得した。ここには愛があって、その愛を自分にも向けてくれる。この二人の愛情の深さと絆に何度も幸せを感じていた。それが俺達家族の形だと、言葉がなくても伝わってくる愛情があった。 なのにクラスの女子、それも腐女子と言うコアな女子達が図柄が大事だと大ぴろげに話していて感化されたに違いない。受けは儚く色気がないとダメ、攻はそんな受けを溺愛してるのが萌えると肩を震わせていた。 図柄が…と拘って、何故どうしてこの二人に拘っていたのか笑いがこみ上げてきたのだ。 別にどっちがどっちでもいいじゃないか。二人が愛し合っていて、堤家が安泰であれば。そんなことはどうでもいいのに、図柄は大事だと思ったことを、また思い出して笑った。 きっと究極に疲れているに違いない。もうそんなくだらないことで笑いが溢れるほど疲れているんだと。 「今日はえらく楽しそうだな。仕事、そんなに楽しいのか?」 新聞を畳み、孝司の方が嬉しそうじゃないか…と思いながら左右に首を振った。人為削減で回らない仕事。何十時間残業したって終わらない。もう壊れていく…そんな状態なのだ。

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