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第5話

「それでさ、15日あるんだよねぇ……消化してほしいんだけどどうする?まとめて取る?会社としてはガッツリ休んでガッツリ働いてくれた方がいんだけどね……」 それって選択の余地はないんじゃないですかね、課長…… 会社が休めというなら休むほかない。自分の仕事を誰かがしなければいけないということになる。 「君が受け持ってて回せないものはメールでやりとりしてもらっ、今月後半15日間休み取ってね」 いきなりの今月末と唐突な爆弾投下で頭がフリーズしそうになった。後半って…後3日しかないじゃん… 課長より先に立ち上がって敬礼のように深く頭を下げると一目散にデスクに戻った。 とりあえず人に回せないものを先に片付けていこう…… 書類を項目別に分けて素早く取り掛かった。三日間でどこまで出来るかわからないが、その先には15日もの休みが待っていると思えば、足どりより心が軽くなった。そしてどういうわけかいつもより捗る仕事が現金だと内心苦笑した。 有休前の三日間の仕事の捗りようは同僚の冷たい視線が痛いくらいに刺さるように感じた。 そして連休前夜。 孝司と直は休みで、三人揃って夕食を囲んだ。 「圭一、15日間も休みどうするんだ?寝て過ごすとか言わないよな」 夕飯を食べ終えた孝司は珈琲を飲みながら呑気に聞いてくる。図星だがどう答えようかと迷っていた。なのに、返事を待たず話し出す。 「多分、そうだろうと思ってたんだよ。その休みの何日間かでも旅行にでも行ってみたらどうだ?」 確かにダラけた15日間を過ごすにしても、朝から晩まで圭一がいるとなるとこの二人の色々な事情もあるんだろう。 「そうだね、一人旅もいいかも。ぶらっとどっか…」 「所在はちゃんとしたところにしか行かせないよ」 長い指をカップに絡ませ鋭い目力で見つめてくる孝司に、内心溜息を吐いた。はわかっていてあえて言ってみたのだ。 就職だってそうだった。内定をいくつかもらい、いつのまにかその全ての会社の概要を把握していた孝司は優良企業だと今の会社に行けと言った。 そんな孝司のことだから好き放題な旅はさせてもらえないだろうということも。 「俺の知り合いに海の見えるコテージをいくつか持っている奴がいるんだ。直と一度行ったことがあるんだが良いところなんだ。島で海を見ながらリフレッシュしてこい」 テーブルに置かれたパンフレットと航空チケット。もう準備してんじゃないかと今度は大きく溜息を吐いてみせた。

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