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第10話

夕食の時間になり、圭一は案内された道をゆっくりと堪能しながら歩いていた。 本当にここはとても綺麗で空気も良くて最高のロケーションだ。今度来る時は恋人と来たい。 そんなことを思いながら歩いていると目の前から楓が歩いてくる。それにしてもここはイケメンの従業員しか雇わないのかと思うほど、英二も楓もイケメンだった。 「楓さん!」 そう叫べば、さっきのノリで返事が帰ってくると思っていた。なのに帰って来た言葉は 「遅い!」 だった。腕の時計を覗けば18時少し回ったところ。そのくらいに来いよと英二の言葉にあまり早くに行くのは失礼だと思いギリギリの時間にコテージを後にした。 さっきの言葉遣いや態度が違う。戸惑いながら圭一はすみませんと謝った。 「咲良!お前お客様になんてこと言ってんだ!」 脇道からぬぼっと現れた人ににのけぞるように驚いた。それは先程会った楓さんだ。 同じ顔をしたした人が二人。見比べるように視線を泳がせ後退った。 「ほら、堤君びっくりさせて。ごめんなさい。俺達双子なんだ。こっちが咲良で、俺がさっき会った楓。宜しくね」双子だと言われてああそうなんだと、双子という存在があることがすっぽり抜けていた。 双子なんだと納得すれば、物言いの違いも納得できる。何故かすみませんとまた謝り、二人の後姿を見ながら歩いた。 ロビーに着けば英二さんともう一人その後ろに短髪のこれまた凛々しいイケメンが立っている。 本当にここはイケメンしか雇わないんだとそこに自分がいることが恥ずかしくさえ思えてくる。家でもここでも圭一の劣等感は増すばかりだった。 イケメン率が高いのはネガティブな自分の感情をかき乱す。平凡で何の取り柄もない圭一からしてみれば羨ましくて不公平過ぎると神様を恨みたくなる。 「どうかな、部屋は気に入ってくれた?」 優しい物言いで、僕の肩を大きな胸に抱きしめた英二さんのいい香りが鼻を掠めた。 イケメンは何してもイケメンだとイケメンを褒める常套句を思い出した。 「ここはイケメンさんが多いですね…」その科白を拾って優しく楓さんが笑った。 その隣では小馬鹿にした表情の咲良が「ばっかじゃねーの」と鼻を鳴らした。 イケメンにはわからないよ…そんな劣等感を引きずりながら圭一は中の部屋へと案内された。

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