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第22話

「部屋にいなかったから、どこに行ったのかと思ったよ」 そう言いながら、缶コーヒーを差し出した。さっき楓に入れてもらったが…なんてことは言わない。 優の好意はちゃんと頂くことにする。 「ありがとう」 「身体…辛くない?」 先程も楓が同じ事を聞いた。この人達は本当に優しくて温かい。プルトップに手を掛け音を立てて開けた。 「いただきます」 そう声を掛ければ優は嬉しそうに微笑んだ。 「怠いけど…なんだか嬉しい怠さです」 そう笑って見せた。この人のおかげであんなに淫らに求められたと圭一は思っている。 この声に酔って…お酒の勢いも借りて乱れた。恋愛感情はなくてもそこには愛があったと思っている。 「そう…嫌な思い出にならないならいんだ……」 「なってませんよ。こんな刺激的な事……一生忘れません」 背もたれに伸ばした手が圭一の後ろ髪を撫でる。その手はとても優しい。 「孝司さんの息子さんじゃなかったら…付き合ってって告ってるよ、俺」 突然の告白に目を見開いた。こんな目を惹くイケメンが自分なんかと絶対あり得ない。 「僕みたいな平凡な取り柄のない人間にそんなこと言ってはいけませんよ」 「そんな事ないよ。誰だって光るもの持ってる。圭一君もね」 光るもの……そんなものがどこにあるのか。自分では気づかない何かなのか。それを見てくれているのなら嬉しいと思う。 それに孝司のおかげでこうやってここの人達に知り合えたことを圭一は感謝していた。何もない所から知り合えるような人達だと思えない。 「それにしても、孝司さん……パワーアップしてない?あの人やっぱすげーわ」 意味のわからない事を言って頭を掻いた優は苦笑しながら溜息を吐いた。 「パワーアップ……ですか?孝司はそんなに変わってないと思いますけど……」 「直さんへの執着が圭一君にも……じゃん。それって二乗なんだからパワーアップしてるでしょ」 そう言われれば直への執着は凄いものがあるが、圭一とは種類が違う執着だ。それを心苦しく思ったことは一度もない。圭一はいつも家族を最優先してきた。それは孝司がそうするように直も同じでそれが当たり前だと思って生きてきた。

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