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第10話

俺にツキが回ってきたのはそんな時だった。 着信音… 後ろで隆史さんが舌打ちした。 そして、俺から離れて奥の椅子に置かれた鞄を漁った。 俺はボーッと濁って目でそれを見ていた。 「…」 「もしもし…だ、だからそれはもう少し…来週にはなんとか…はい。絶対に。はい。お約束しますから、お願いです。」 隆史さんは焦ってるみたいだった。 逃げよう… 今逃げないと、もっと酷い目に合う… 俺は痛む身体に鞭打ってヨロヨロ立ち上がると、足元で縺れるズボンと下着を上げて部屋を出た。 出たはいいけど走れない… 殴られた腹を庇いながら壁伝いに歩いた。 痛くて上手く歩けない… 「クソッ、歩けよ…なんなんだよ…」 このままじゃ、捕まる… 下手に歩くと奥のが出るし、裂けたケツが擦れて痛い。 とりあえず物影に隠れた。 身体を小さくするのだって痛い。 「痛ッ…」 もう身体は限界だった。 目の前が霞んで見える。 頭がボーッとする。 大好きなシュートの顔も思い出せない。 助けて… 助けて、シュート… 「あの、大丈夫ですか?気分でも悪いのですか?」 肩が軽く叩かれて、上から声が聞こえた。 その声もぼやけて聞こえる。 とにかく、誰でもいいから… 「助け…て…」 「え、ちょっと貴方、大丈夫ですか!」 そこで目の前が真っ暗になった。

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