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第14話
暫くして、俺が泣き止むとその人が立ち上がった。
「あー、ダサい!超ダサいとこ見られた!!」
恥ずかしくなって両手で顔を覆った。
うっかり心の叫びが口から飛び出るくらい恥ずかしい。
「貴方は気にするのでしょうけれど、私は気にしてはいませんよ。それよりも朝食にしませんか?」
「え、……あー…」
このホテルのバカ高いメニュー表を思い出すと二つ返事とはいかない。
昨日の飲み会で諭吉さんが一人消滅。
残る諭吉さんは二人。
多分宿泊代でその諭吉さんも消滅…
残りは野口さんが数人と樋口さんが一人くらいあった気が…
給料日だったから財布に余分に金が入っていた事にホッとしたけど、やっぱりどう考えても朝食は断らないとだ。
「安心してください。朝食代を要求したりしませんし、もちろん宿泊費も結構です。」
そんな顔に出した覚えないけど、俺の考えてる事がこの人には分かったらしい。
殴られるは、ギャン泣きするは、金は無いは…
この人の中の俺の印象は最悪だと思う。
手当てまでしてもらって、宿泊費と朝食代まで出してもらうとか、申し訳なさすぎる。
「あー、いや、あんまりお腹空いてないので…」
「貴方を泊めようが泊めなかろうが宿泊費や朝食代は発生しませんから。だから安心して食べていってください。」
「発生しないって…」
「このホテルは私の父が経営していまして、この部屋は私が借りて住んでいる部屋ですので宿泊費は発生しません。」
「朝食代…」
「私と貴方は友人でも知り合いでもありませんが、他者の家に招かれて食事代を要求された事はありますか?」
「ないです。」
「そういう事です。さぁ、顔を洗ってきてください。」
「あー…はい。」
納得したようなしないような…
上手い具合に言いくるめられて、首を傾げながら洗面所に向かった。
顔洗って、北見西堪えながら歯磨きして戻ると、その人が居る場所だけ変に優雅っていうか…
ティーカップ片手に窓際で朝日浴びてキラキラしてる人とか初めて見た。
英国映画かっ!ってツッコミたいくらいだ。
キラキラしながら俺を見たその人は穏やかに笑って、うっかり俺は胸キュンした。
違う違う、俺が胸キュンするのはシュートキュンだけだろ!!
「さぁさぁ座ってください。」
促されてその人の正面に座った。
正面でまじまじと見つめる。
やっぱ綺麗な人だ。
前髪は少し長いけど、モサモサだらしなく見えないのは、トップとサイドが短めだからだったのかとか、伏せ目とか流し目が雰囲気あるとか…
「改めまして、昨日はありがとうございました。」
特に話す事もないし、あんまり見つめてるのも不自然だからもう一回お礼を言ってみる。
手を膝に乗せて深々頭下げて…
「発見したのが私で良かったです。お客様や従業員だったとしたら、警察沙汰でしたよ。」
「それは勘弁…」
「騒ぎにされると困るからですか?」
「凄く困ります。」
我が儘で東京来てるのに、親に心配とか迷惑はかけたくない。
それに、シュートにバレちゃうし…
それだけはどうしても避けたい。
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