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君心地

 いつもより真剣な表情で君が悩んでいる姿が目に入った。  休憩で部屋から出てきた俺の存在には気付いていないようで、ソファに座ったままじっとしている。  しばらくその光景を眺めていたが、もうどれくらいその姿でいるのかな。 「ねぇ」  反応速度は俺よりもずっといいはずなのに、だいぶ遅く反応してこちらを見ていた。君は俺を見るなり眉間のシワをふっと消した。 「悪い。どうした?」 「ううん。休憩がてらコーヒーでも淹れてもらおうかなって思ってただけ」  手に持ったカップをテーブルに置き、俺は君の隣に腰掛ける。  離れる気配は一切なく、いつでも君のことを掴めそうだ。  そう思うと急に君に触れたくなってしまった。  俺は膝に置かれた手を取り、ぎゅっと握り締める。  ひんやりとした手が俺の手の中にある。俺が思っていた以上に君は考えていたようだ。  ぎゅっと掴んだその手が動き、指を開こうとしている。  俺はそれを緩め、指を広げ、君の指に絡ませてから握る。  湿った手が脈打ちながら俺の手をぎゅっと握る。  こんなにも、俺のことを考えていてくれていたのかと思うと、胸が熱くなる。  嬉しいという言葉だけでは物足りない。そんな感情が湧き上がる。 「俺のためにありがとう。今はコーヒーと甘めのお菓子がいいかな。それで、ごはんはたまにはご褒美がいいな」  一瞬驚いた表情を見せ、すぐに柔らかい表情となった。  これで全て悩みがなくなったのか、君の手はとても温かくなっていた。  このまま離さないでずっとこうしていたい。そんな欲望が湧き上がる。 「……コーヒーはいつがいい?」 「んー、もうちょっと後でいいかなー」  この温かいものが今はとても心地いいから、もうしばらくこうさせてほしいな。 (この作品は『繋いだ手から伝わる体温』をテーマに書きました)

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