17 / 21

鍵の掛かっていない部屋

 君と出会ったときは、心に鍵を掛けていたように何も見えなかった。  けれども今は、言葉にしなくても君の考えていることが分かる気がする。  そろそろ君は俺を呼びに来るのかな。 「おい、食事の準備ができた」 「はーい。今行く」  ほら、当たった。  俺は思わずクスリと笑う。 「どうしたんだ、突然」 「んー、何でもない。そろそろかな~って思ってただけ」  俺だけが分かっていればいい。そんなことを考えていた。  しかし、君は俺の前に立って俺をじっと見ていた。 「自分だけだと思うな。俺にだって分かることはある。今日は俺のことが分かってたんだろ?」 「ん……まあね」  すると君は、そっと俺の唇に唇を重ねてきた。 (この作品は第65回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)

ともだちにシェアしよう!