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鍵の掛かっていない部屋
君と出会ったときは、心に鍵を掛けていたように何も見えなかった。
けれども今は、言葉にしなくても君の考えていることが分かる気がする。
そろそろ君は俺を呼びに来るのかな。
「おい、食事の準備ができた」
「はーい。今行く」
ほら、当たった。
俺は思わずクスリと笑う。
「どうしたんだ、突然」
「んー、何でもない。そろそろかな~って思ってただけ」
俺だけが分かっていればいい。そんなことを考えていた。
しかし、君は俺の前に立って俺をじっと見ていた。
「自分だけだと思うな。俺にだって分かることはある。今日は俺のことが分かってたんだろ?」
「ん……まあね」
すると君は、そっと俺の唇に唇を重ねてきた。
(この作品は第65回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)
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