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たまにはちょっといい?

 君は俺の考えていることが手に取るように分かる。  いや、その言い方は少し違うかな。  けれども、君がいなければ俺は服一つすらまともに用意できない。  俺は資料のために用意してくれた君の頭を撫でる。 「なんだよ」 「いや。用意してくれて嬉しいなって」 「俺はもう行くぞ」 「あ、待ってよ」  俺は君の手を掴んで部屋から出るのを阻止した。  そこにいるのは、不機嫌そうな表情の君。 「ねぇ、俺の着物姿似合う?」 「っ……」 「教えて」 「……に、似合うよ。似合ってるに決まってる。俺が着せたんだし」  視線を逸らし、照れくさそうに呟く君がいた。  どうしてそんな表情をしてくれるのか。  俺は満面の笑みを浮かべて君を抱き締めた。 (この作品は第70回Twitter300字ssの企画に参加した作品です)

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