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第4話

  当然だ。ソレは然るべき対処で、然るべき対応。そして、悪意ある言葉が俺の口から溢れ落ちることを嵯峨は願っていた。 『うるさい、この変態オカマ野郎が!気色悪いんだよ解ってんのか!』 ヘテロであるがゆえの言葉。だが、偏見を生むその言葉が寸なりと俺の口から出るハズがない。バイでありそうで、ホモでもありそうな嵯峨にも向けられるその言葉を吐いてイイのか、である。嵯峨は絶対者だ。抵抗があるだろう。どんな仕返しがくるのか解らないんだから。 つまるところ、嵯峨の権力の強さは中学のときに確認済みで、俺よりも強く、勝てる気がしない。そんな敵うハズもない相手にわざわざ牙を向ける必要があるだろうか? だが、ソレをしないと俺を睨んでいる嵯峨の怒りをもっと買うことも確かで、俺は決断する。同じ転ぶんなら、嵯峨がみてないところがイイ、と。 芹沢に掴まれた腕を振るい剥がすことはせずに、芹沢が引っついたまま俺は全力疾走をした。同じ恐怖でもまだ芹沢の方が怖くない。 住宅街を駆け抜けて、繁華街に戻る。嵯峨が追いかけてくることは解っていることだから、繁華街の裏道を闇雲に走った。ココまできたら大丈夫だと必死に俺の腕にしがみついていた芹沢をみる。 「………宗ちゃん?」 不安そうな顔で俺の顔をみる芹沢は、キョロキョロと辺りをみ渡していた。そりゃそうだ。いまから俺に貶されるのだから。 「──うるさい、この………変態……」 オカマ野郎が!気色悪いんだよ解ってんのか!と続く言葉が、目の前にあるラブホテルの入口で完全に塞がってしまう。 「ち、………がう!!誤解だ!!」 と、叫び直してももう遅い。芹沢の紅い瞳が蘭々に輝いている。芹沢と再会したときのことを思い出しても、中学のときに嵯峨とつき合っていたことを思い出しても、その嵯峨が芹沢にさっきしていたことを思い出しても、そうだとしかいえない。 「──イイよ。宗ちゃんなら………♪」 芹沢は俺が芹沢のことをいじめていたからそういうのか、ちょっと恥じらった感じで、だが、絡めた腕はがっちりとホールドさせて、ラブホテルの中に入っていく。手慣れた感じでタッチパネルを押していちばん高い部屋を選ぶ。帰りの電車代しか入っていない俺は大きく首を振った。否、ソレよりもこの現場を嵯峨にみられたらおしまいだ。もう、仕返しというレベルでは追いつかない脅威が待っている。 「………せ、り沢………」 「宗ちゃん、ハナだっていっているでしょう♪」 ココまで誘っておいて、なに?という芹沢の顔が怖い。お金がないといえば諦めるのかと思って、素直に「帰りの電車代しかない」といったら、芹沢はもうソレはにこやかに「大丈夫、お金はオレが持ってる」と返してきた。コレは完全にダメだと逃げる算段を立てるが、全部芹沢の言葉で踏み倒される。 アレよアレよと選んだ部屋に押し込められ、アレよアレよとベッドに押し倒される。どこにこんな力とテクニックがあるんだと嘆いても、再会したあのときからそうだったと涙ぐむしかできなかった。 芹沢の手際のよい動きで、バックルとジーンズの留め金は外され、ずるりと下着ごと脱がされたジーンズはベッドの下の床である。下半身裸の露出された俺の息子は小さく縮こまっていた。 「───大きい!」 そうはしゃぐ芹沢には、立派なモノにみえただろうが、毎日ソレをみている俺としてはかなり小さく萎えているのだ。その可愛そうな息子を芹沢は躊躇もなく手のひらで包んで、上下にしごく。自慰くらいするから、芹沢の上手さは直ぐに解った。この歳で童貞ではない俺は、いままでつき合ってきた彼女やそういう関係だけを求めてきた彼女らと比較してしまう。そして。 「───ハ、ナ…………」 止めろという言葉も儘ならないくらい頭が真っ白になって、芹沢に卑猥なことを押しつけてしまっていた。口に俺の息子をくわえ込む芹沢は、男だと解っていても色気がある。なによりも、いわなくともそうしてくれるところが俺の理性をかき乱した。 「もっと、舐めて」 芹沢の頭を掴んで腰を振りそうになるのをぐっと堪えて、イクまでの短い時間を堪能する。身体の芯から熱される熱いモノが下腹部に集まってきたと思ったら、身震いが起こる。ぶるっと震えたと思った瞬間には、もう芹沢の口の中に白濁した液体を吐き出していた。ずるりとストローのように尿道を啜りあげる姿はどんな女よりもぐっとくる。力をなくした息子もむっくっと膨れあがり、再び固さと大きさを維持しようとしていた。ソレまで、こってりと嵯峨のことを忘れてて、慌てて芹沢の口から息子を引き出すと芹沢は艶麗に嗤った。  

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