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第6話
海の波の音が静かな夜。
遠くで船の汽笛が聞こえてくるような気がした。
意識はあったけど、瞼は重くて億劫で、開けることはできなかった。
おはようって挨拶する声。
母親の泣き声。
今日は天気がいいねって、身体を拭いてくれる声。
煙草の匂いをまとわせて、近づいてくる足音。
おやすみなさいって、髪を撫でてくれる優しい声。
いろんな声を聞きながら、僕はゆっくり目を開けた。
自分の体なのに、満足に動かせられない身体。
しばらく、天井をずっと見ていた。
白い天井に、黒いうねうねした線がたくさん入っていて、病室の天井のようだ。
ただただ、天井を見上げている。どれぐらいぼーっとしていたかわからない。
ただ体は動けなかったけれど、目だけは少し動かせるようになったので、視線を窓際に向けた。
夜が――夜が明けようとして眩しい光と紫色の光が見えた。
朝焼けの色をもっと見たくて身体を動かそうとしたのに重くて、自分の体じゃないみたいで、目を動かすと頭の奥がツンと痛んだ。
「目っ」
床に何か落とす音が、リバウンドして耳の中に入ってくる。
足音ととともに、誰かがナースコールのひもを強く引っ張った。
「先生! 324号室の入井さんが目を覚ました! 至急、来てください。先生、324号室の――」
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