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第9話

次に目が覚めたのは、翌日の9時59分。天気は晴れ。 窓のカーテンが全部開けられ、締め切っているのに冷房で隅に寄せられたカーテンが揺れているのが分かった。 「あ、起きました?」  僕の目覚めに、とても落ち着いた声で反応され、そちらに視線を向ける。  穏やかな海のような、優しい声だった。 「お名前を言えますか?」 濡れたタオルで口を拭かれ、驚きながらも『風海です』というと、その人が口角をあげて笑うのが分かった。 「植物状態からの意識の回復は、この病院では前例がないんです。しかも5年ですよ。ありえないんです。奇跡に近い。だから、病院関係者とか新聞記者がうるさいから、今日から特別室なんですよ」 「……あの」 「はい? あ、ご両親は今日はお仕事で夕方になりますよ」 「いえ、あの」 優しい声、朝日が目を焼きながらじわりと生理的な涙が浮かぶ。 「あの、足とか手に感覚がない、です」 その言葉に、その人は表情を変えない。 「5年も眠っていたんです。今、筋力がとても落ちていてすぐに体は動かないと思います。それと貴方は右前方の頭部を二回強打していて、後遺症があるはずです。それもゆっくりリハビリしていくんで大丈夫ですよ」

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