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第12話
それから一週間は、起き上がることもできなかった。
一日中、色んな検査や医師と会話、両親との会話、検査、検査検査。
僕だけ浦島太郎になっていたのだけは理解した。
遼の姉である一条院長からの説明では、事故前に僕はライフジャケットをつけたいと遼と言い争っていた、と目撃者がいたらしく、それを強引に大丈夫だと宥めすかせた遼が悪いと判断していた。
なので保険適用外のケアはほぼ病院側が無償でしてくれたらしく、弁護士をいれてきちんと手続きしていると言われた。
遼と言い争った覚えはなかったけれど、どうやら僕の話と遼の話ではだいぶ内容が違うらしく、僕の記憶はまだはっきりしていないようだった。
遼は、水上バイクの免許はく奪はもちろんのこと、スキューバダイビングの講師の就職も取り消され、今は医療機器の会社の営業部に就職しているらしい。
「って言っても、親の監視の目があるコネ先なんだけどな」
苦笑する遼が、まだ食事もできない僕に花を持ってきてくれたので首を振った。
「僕、遼の大好きな海での仕事……奪っちゃったな。ごめんな」
触れたいのに、手を動かすのも億劫だった。
代わりに遼の両手が僕の手を掴んで、頬まで引き寄せてくれた。
温かい遼の頬擦りに、胸が熱くなる。
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